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2023.05.25

インサイトとビッグピクチャー

インサイトとビッグピクチャー

デザインにおけるインサイトとは?

デザイン・プロセスにおける「インサイト」とは、実用的な成果をもたらしてくれる、あるシチュエーションに対する深い理解のことを言います。この理解は、 人々の観察、ステークホルダーとの会話、ワークショップへの参加など、予備的な調査活動から得られます。こうした活動から得られた知見を分析してまとめ、その関係性を理解できた時、調査した内容が「意味を成す」と言えます。ですが、すべてが意味を成したからといってデザイナーの仕事はそこで終わりではありません。得られた理解を活用して未来について考えたりモノを作ったりすることを求められているのです。以上をまとめると、デザイン・インサイトとは、あるシチュエーションに対する深い理解であり、そこから未来に向けて何かを生み出すもの、と定義できます。

デザイン・インサイトは「ビッグピクチャー」の形で可視化すると他者とコミュニケーションしシェアすることができます。ビッグピクチャーとはリサーチ・分析・概念化を通じて得た内容を視覚的に表したものです。デザイン・インサイトはシチュエーションに対する深い理解を実用的なデザイン成果に結び付けてくれます。

デザイン・インサイトをどのように得るのか?
デザイン・インサイトは、予備的調査を行い未整理のデータを収集することで得られます。未整理のデータはデザイン概念化の開始時に分析します。図1は、未整理のデータの分析フレームワークです。分析パスは左下の「トピックまたはシチュエーションに関連するデータの収集」からスタートしていることが分かります。分析レイヤーはセンスメーキング・レベルで区分けしたAckoffのDIKWスキーム(1989)に基づいています。DはData(データ)、Iは Information(情報)、KはKnowledge(知識)、WはWisdom(知恵)を表しています。ここでデータを記録し、分類して情報へとまとめ上げます。分析が進むと、情報は知識に変換されます。理論は調査に境界を設け、分析プロセスを明らかにしたものである、と言われますが、未整理のデータの分析過程でも新しい理論が生まれることがあります。

分析は、フレームワークの分析サイドからデザインサイドへ、図の右上方向に進みます。その過程のセンスメーキングの各レベルで調査とデザインが交わります。ハイレベルなセンスメーキングからはより大きなアイデアが生まれます。最高レベルでは、ビッグピクチャーによってセンスメーキング・サイドとデザイン調査サイドが結び付けられます。

ビッグピクチャーとは何か?
ビッグピクチャーは予備調査、分析およびデザイン概念化で得られた内容を視覚的に表したものです。得られた知見を再構成したものなので、把握しやすく他者との共有も容易です。ビッグピクチャーは、データを関連付け、記録し、分類することで以前には見えなかったパターンや構造を明らかにします。時にはあなたの視点からは見えなかった(あるいは見つけられなかった)ものをビッグピクチャーが見つけてくれることもあります。また、ビッグピクチャーは未来を指し示し、実用的な成果を得るための新しい考え方を提案したり促したりしてくれます。

ビッグピクチャーが表すものは何か?
ビッグピクチャーは、3つの主要表現カテゴリーから構成されます。概念、空間、そして時間です。概念表現方法には、モデル、理論、フレームワークが、空間表現方法には、マップとランドスケープが、時間表現方法には、タイムラインとジャーニーがあります。また、ビッグピクチャーのテーマは例えば感情にフォーカスを当てるか顧客にフォーカスを当てるかによっても変化します。図2は、ビッグピクチャー作成に役立つテーマ(左列)と表現タイプ(右列)です。各列の 項目を組み合わせることで膨大な可能性が生まれます。例えば、経験タイムラインや理解の概念モデルといったビッグピクチャーを作成することができます。

実用性のあるビッグピクチャーの見分け方は?
予備調査で得られた未整理のデータから効果的なビッグピクチャーを作成するには長年の経験が必要です。優れたビッグピクチャーには次の3つの特徴があります。

1.シンプル
ビッグピクチャーは考え方の新しい方向を示してくれます。シンプルにすることで、新しい方向が見えやすくなります。最高レベルのビッグピクチャーは1ページに収めなくてはなりません。

2.覚えやすい
他の人たちが詳しいメモを取らなくても、ビッグピクチャーが表す内容を記憶できます。

3.調査結果すべてに結び付いている
トップレベルの可視化は、知識、情報、データと、それぞれの階層に結び付いています。

まとめ
デザイン・プロセスにおけるインサイトは、ビッグピクチャーとして可視化できます。ビッグピクチャーはあるシチュエーションに対する理解を実用的なデザイン成果に結び付けるのに役立ちます。

参照資料
Ackoff, R. L. (1989) From data to wisdom.Journal of Applied Systems Analysis 15:3-9.

Sanders, E.B.-N. and Stappers, P.J.(2012) Convivial Toolbox:Generative Research for the Front End of Design, BIS Publishers, NL.

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