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8 17, 2015 01:00 101デザインメソッドとビジネスモデルキャンバス

7_キャンバス

こちらは、イリノイ工科大学デザインスクールのヴィジェイ・クーマー教授が著したデザイン思考の教科書、『101デザインメソッド』を紹介するコーナーです。

今回は、101デザインメソッドに沿ったイノベーションプロジェクトを進行する中で、効率的に事業設計を行うためのツール「ビジネスモデルキャンバス」をどう活用できるかについて考えたいと思います。

まず、101デザインメソッドでは、イノベーションをもたらすためのプロジェクトを7つのモードに分けて捉え、プロジェクトの状況に応じてモードを使い分けながら、イノベーションに向けた検討を進めていきます。7つのモードとは以下を指します:

モード1:目的(機会)を見出す
モード2:コンテクストを知る
モード3:人々を知る
モード4:インサイトをまとめる
モード5:コンセプトを探求する
モード6:解決策を練る
モード7:製品・サービスを実現する

一方、ビジネスモデルキャンバスでは、ビジネスモデルを9つの要素(顧客セグメント/提供する価値/チャネル/顧客との関係/収益の流れ/主なリソース/主な活動/パートナー/コスト)から構成されると見なし、各要素を検討しながら最良のビジネスモデルを組み立てていきます。

101デザインメソッドがイノベーションをもたらすためのプロセス・メソッドの視点で描かれているのに対し、ビジネスモデルキャンバスは最終的なアウトプット(=ビジネスモデル)の視点で描かれているとイメージいただければ、理解していただきやすいかと思われます。

さて、ビジネスモデルキャンバスがビジネスモデル全体の俯瞰を得意とすることから、少なくとも二つの活用が可能になります。それは、「A.既存のビジネスモデルのベンチマーク」と「B.新しいビジネスモデルの組み立て」の二つです。

「A.既存のビジネスモデルのベンチマーク」では、他業界のビジネスモデルのベンチマークを通して新しい機会領域を発見したり(モード1)、自社業界のビジネスモデルのベンチマークを通して各社が陥っているバイアスを見つけ出したり(モード2)することが可能です。それらのベンチマークとは、業界内各社の9つのビジネス要素(顧客セグメント/提供する価値/チャネル/顧客との関係/収益の流れ/主なリソース/主な活動/パートナー/コスト)の傾向分析を指します。

「B.新しいビジネスモデルの組み立て」では、調査で得たインサイトをベースに4つの要素(顧客セグメント/提供する価値/チャネル/顧客との関係)を検討することでコンセプトやソリューションのアイデアを得たり(モード5・6)、それを9つのビジネス要素にまで展開・統合して新しいビジネスモデルの示唆を得る(モード7)ことが可能です。

以上、ビジネスモデルキャンバスの特徴が理解できると、それをイノベーションプロジェクト上の適切なタイミングで活用することが可能になります。イノベーションプロジェクトの中で情報の森に迷ったら、ビジネスモデルキャンバスを用いて全体像を整理し直してもよいでしょう。そのように各手法の強みを活かしていくことができれば、イノベーションに向けた、より精度の高いプロセスが実現できるのだろうと思います。

Takeshi Sato株式会社mct ストラテジスト

【タグ】 101_design_methods,

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