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2025.07.02

Series|近未来小説:サスティナブルな世界へと続く道―#07(プラネタリーヘルス)



近未来小説07
 

このブログは、いまから10年後にサスティナブルな経営を実現した皆さんが、どのような課題をどのように解決してきたのかを振り返る、近未来小説です。第七回のテーマは「プラネタリーヘルス」に焦点を当てています。
 
 

 

地球システムの劣化が人々の健康に直接的な悪影響を与える社会 

10年前、世界は人間の健康と地球環境の健全性が不可分であるという認識に目覚め始めていました。気候変動、生物多様性の喪失、環境汚染などの環境問題が、感染症の拡大、栄養不良、メンタルヘルスの悪化など、人々の健康に直接影響を及ぼしていることが科学的に明らかになっていました。
 
ランセット委員会の「プラネタリーヘルス」レポートには「地球システムの劣化は、過去50年間の健康向上の成果を覆す可能性がある」と警告が記載されていました。 
 
#07-1_人間の健康と地球環境の健全性は不可分である
 

そんな中、人間と地球の健康を統合的に捉える概念として、「プラネタリーヘルス」という新しいパラダイムが発展しました。これは人間の健康を地球の自然システムの健全性と不可分のものとして理解し、両者を同時に向上させるための学際的アプローチです。
 
 
#07-2_プラネタリーヘルスで人間の健康と地球の自然システムの両者を同時に向上させる
例えば、都市の緑地拡大は、単なる環境保全策ではなく、大気浄化、ヒートアイランド現象の緩和、身体活動の促進、メンタルヘルスの改善など、人間の健康にも多面的な効果をもたらすことが実証されました。こうした「共便益(コベネフィット)」を重視する政策により、多くの都市で住民の健康状態と環境指標が同時に改善されました。
 
#07-3_都市の緑化はコベネフィットを重視した政策

先進的な医療機関や公衆衛生組織の取り組みにより、医療従事者は環境要因を健康の重要な決定因子として認識するようになり、現在では予防医学と環境保全を統合したアプローチが標準となっています。また、環境負荷の高い生活様式や製品が健康リスクとして認識され、持続可能な選択が健康的な選択と同義とみなされるようになっています。

さて、我々はどのような医療システムや健康的な生活を選ぶことになるのでしょうか?
 
 

 

考えるべき問い

10年後に選ばれない医療・健康アプローチになっているとしたら、それはなぜでしょうか?
10年後に選ばれる医療・健康サービスになるために、今、何をすべきでしょうか?

202X年現在、私たちはプラネタリーヘルスの考え方を取り入れた社会への移行を始めたばかりです。
我々が人間と地球の健康を統合的に捉えることで、より健全で持続可能な未来への道を切り開くことができます。
 
 

【連載】 Series|近未来小説:サスティナブルな世界へと続く道

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