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2025.06.19

Series|近未来小説:サスティナブルな世界へと続く道―#05(厄介な問題)



近未来小説05
 

このブログは、いまから10年後にサスティナブルな経営を実現した皆さんが、どのような課題をどのように解決してきたのかを振り返る、近未来小説です。第五回のテーマは「厄介な問題」に焦点を当てています。
 
 

 

厄介な問題に立ち向かう社会

10年前、世界は「Wicked Problem(厄介な問題)」という概念に直面していました。複雑で相互に関連し、完全な解決が難しい問題群—気候変動、格差、高齢化、食料安全保障など—は従来の問題解決アプローチでは太刀打ちできないことが明らかになっていました。
 
ハーバード大学のレポート「Tackling Wicked Problems」には「21世紀の最も重要な社会課題の85%はWicked Problemの特性を持ち、単一の視点や専門知識だけでは解決不可能」と記載されていました。
 
 
5-1_複雑で相互に関連し、完全な解決が難しい問題群にどう立ち向かうか?
 

そんな中、Wicked Problemに対処するための方法論として「システム思考」と「集合知活用」という新しいアプローチが発展しました。これは問題の全体像を把握した上で、多様なステークホルダーの知恵を結集し、継続的な学習と適応を通じて複雑な問題に対処する手法です。

例えば、都市の交通渋滞という一見単純な問題も、道路拡張という単一解ではなく、公共交通機関の改善、リモートワークの促進、都市計画の見直しなど、複数の視点からの介入が必要でした。このような「システムレベルの変革」により、多くの都市で移動時間が半減し、大気汚染も大幅に改善されました。
 
 
5-2_多角的なアプローチと継続的に改善し、多様な視点を取り入れ適応的に学習していく
先進的な組織の取り組みにより、社会はWicked Problemの性質を理解するようになり、現在では単純な解決策を求めるのではなく、多角的なアプローチと継続的な改善を当たり前と考えるようになっています。また、複雑な問題に対して単一の視点からしか対処できない組織やリーダーは信頼されず、多様な視点を取り入れて適応的に学習できる組織が選ばれる社会になっています。

この過程で学んだ重要な教訓は、Wicked Problemへの対処には多様な視点と協働が不可欠であり、その過程を通じて社会自体がシステム思考を身につけ、より賢明な意思決定ができるようになるということです。さて、そのときに人々はどのような組織・リーダーを選ぶことになるのでしょうか?
 
 

 

考えるべき問い

・10年後に選ばれない組織・リーダーになっているとしたら、それはなぜでしょうか?
・10年後に選ばれる組織・リーダーになるために、今、何をすべきでしょうか?

202X年現在、私たちはWicked Problemと共存しながら解決への道を模索し続けています。
我々が複雑な問題への理解を深め、協働的なアプローチを促進することで、より良い未来への変化を生み出すことができます。
 
 

【連載】 Series|近未来小説:サスティナブルな世界へと続く道

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