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2025.06.19

Series|近未来小説:サスティナブルな世界へと続く道―#06(トランジッションデザイン)



近未来小説06
 

このブログは、いまから10年後にサスティナブルな経営を実現した皆さんが、どのような課題をどのように解決してきたのかを振り返る、近未来小説です。第六回のテーマは「トランジッションデザイン」に焦点を当てています。
 
 

 

「既存システムの解体」と「新システムの構築」が同時進行する社会 

10年前、世界は気候変動や社会格差といった複雑に絡み合う課題に直面し、単発的な解決策では根本的な変化をもたらせないことが明らかになっていました。しかし、持続可能な未来への移行には、技術革新だけでなく、社会システム全体の根本的な変容が不可欠であることも見えていました。
 
カーネギーメロン大学が発行した「Transition Design Framework」には「持続可能な未来への移行には、既存システムの段階的解体と新システムの構築を同時進行で設計する必要がある」と記載されていました。
 
#06-1_既存システムの解体と新システムの構築の同時進行プロセスをデザインする
 
そんな中、社会変革を設計するための方法論として、「トランジションデザイン」と呼ばれる新しいアプローチが発展しました。これは長期的視点に立ち、社会技術システム全体の変容を促進するための理論と実践です。特にXカーブという概念で表される「既存システムの解体」と「新システムの構築」の同時進行プロセスをデザインする手法です。
 
#06-2_Xカーブの上昇と下降の両方をデザインすることによって、短期間で低炭素社会へと移行できた
例えば、エネルギー移行においては、再生可能エネルギーという新しいシステムを構築する一方で、化石燃料依存というレガシーシステムを段階的に縮小するという、Xカーブの上昇と下降の両方をデザインすることが実践されました。この「トランジションデザイン」により、多くの都市や地域が短期間で低炭素社会へと移行することができました。
 
#06-3_短期的な解決策に飛びつかず、移行プロセスを積極的に設計・促進する組織が選ばれる社会

先進的な組織や自治体の取り組みにより、社会はシステム変革の複雑さを理解するようになり、現在では短期的な解決策に飛びつくのではなく、長期的な移行プロセスをデザインすることが当たり前となっています。また、変化に抵抗し旧システムを守ろうとする組織は信頼を失い、移行プロセスを積極的に設計・促進する組織が選ばれる社会になっています。

 

 

考えるべき問い

10年後に選ばれない組織になっているとしたら、それはなぜでしょうか?
10年後に選ばれる組織・リーダーになるために、今、何をすべきでしょうか?

202X年現在、私たちは持続可能な未来への移行という大きな変化の途上にあります。
我々がトランジションデザインの原則を活用し、構築と解体を同時に設計することで、より良い未来への移行を加速することができます。
 
 

【連載】 Series|近未来小説:サスティナブルな世界へと続く道

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