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2025.07.14

Blog|「ティーチャーカスタマー」 /顧客にサービス開発の伴走者になってもらう方法



teacher
 
 
「この事業アイデアにニーズはあるんだろうか…」
「このまま推進して本当に良いのだろうか…」

新サービスの企画・開発の現場では、このような不確実性による迷いや不安は絶えません。

このような状況への1つの解決策として、顧客にサービス開発の伴走者になってもらう
「ティーチャーカスタマー」について具体的な事例を交えながらご紹介します。  
 
 

 

「ティーチャーカスタマー」とは

こんにちは! mctの鶴森です。ティーチャーカスタマーという言葉をご存知でしょうか?
ティーチャーカスタマーとは、「開発途中の未完成なサービスを、一緒により良いものへと育ててくれる『先生』のような顧客」のことを指します。サービス開発の早い段階でつながり継続的にフィードバックをもらえる関係を作ることで、企画のスピードや精度が高まります。
 
ティーチャーカスタマー(teacher customer)とは、市場としての魅力度が高く、かつ学習の機会としての魅力度も高い、戦略的に選ばれた顧客のことを指す 。彼らは、企業が提供する初期段階の不完全な製品やサービスを意図的に導入し、その完成度を高めるために協力するパートナーであり、特にターゲットとする業界や特定用途に関する知見を十分に持っていない場合に有効。
ティーチャーカスタマーは完成品を評価する評論家ではなく、開発中の新サービスの可能性を信じ、
「本当に解決すべき課題はこっちだよ」と、進むべき道を照らし、
「私ならこう使うのに」と、新たな可能性のヒントを与え、
「ここは分かりにくい」と、厳しいけれど愛のある指摘をくれる、
まさに「先生」のような存在です。
 
ここまで読まれて「BtoB」サービスに限定した話だと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。「BtoC」サービスにも有益で、生活スタイル/文化/思考パターンなど課題やニーズが生まれる背景への知見や理解が不足している場合に特に有効です。
 
 

新サービス開発における4つの主要な顧客タイプ

ティーチャーカスタマーを適用場面やメリットについて、新サービス開発に関わる他の顧客タイプである「リードユーザー」「アーリーアダプター」「リファレンスカスタマー」と比較すると以下のように表現できます。
 ・ 新サービスのアイデアに困ったら「リードユーザー」を探し、
 ・ 生まれたてのサービスを磨き上げたかったら「ティーチャーカスタマー」に伴走してもらい、 
 ・ 完成したサービスを一気に広めたかったら「アーリーアダプター」の力を借り、 
 ・ サービスの信頼性を高めたかったら「リファレンスカスタマー」に協力してもらう。
 
 
リードユーザー
ティーチャーカスタマー
アーリーアダプター
リファレンスカスタマー
主要な役割
革新者
新コンセプトの源泉
共同開発者
製品の洗練役
影響者
オピニオンリーダー
成功事例
社会的証明
関与のタイミング
アイデア創出段階
プロダクト開発段階
成長初期、PMF直後
成長期
企業の目標
画期的なイノベーションの機会を発見する
ソリューションを「磨き上げ」検証する、市場を学ぶ
「キャズム」を越え、市場の勢いを築く
マーケティング資産を蓄積し、営業の障壁を下げる
企業にとっての
メリット
/企業への貢献
市場に先駆けたニーズと、それに基づく独創的なアイデアの獲得
プロトタイプへの反復的フィードバックによる市場適合性の達成
信頼性の付与、広範な市場への普及
成功事例、ケーススタディとしてマーケティングに活用
顧客にとっての
メリット
/協力の動機
既存製品では解決できない、自らが抱える先進的かつ喫緊の課題の解決
自分(自社)仕様に最適化されたソリューションの入手
業界の先見者・オピニオンリーダーとしての地位の維持
自社の成功のアピール、ベンダーとの関係強化

 

「ティーチャーカスタマー」と出会う方法

では、このような特徴を持つ「ティーチャーカスタマー」にはどうすれば出会えるのでしょうか?
ティーチャーカスタマーとなる人の候補は、あなたが考えている新サービスが解決しようとしている「課題」に対して、強い想いや問題意識を持っている人です。彼らは、あなたのアイデアに触れたとき、他の誰よりも「自分ごと」として捉え、的確で熱量の高いフィードバックをくれます。
 
mctが新サービス開発の伴走支援をする際には、出会いの確率を高めるため次のような3つのことを意識、実践しています。

  1. 意識的に探索する(SNS探索/コミュニティ参加/ピラミッディング法)
    解決したい課題をSNS検索し、熱量の高い投稿をしている人に直接コンタクトを取ったり、課題の当事者が集まる「コミュニティ」に連絡をとります。また、既に出会っているティーチャーカスタマーに「あなたのような熱量のある知人を紹介してください」と数珠繋ぎに人を紹介してもらうこと(ピラミッディング法)も有効です。

  2. 仮説検証インタビューを「仲間探しの場」として捉える
    仮説インタビューでは「私が欲しかったのはこれだ」という反応で会うことがあります。さらにティーチャーカスタマーの人の特徴として「サービスのこの部分はどうなっているのか?」など、解像度を高めるための逆質問をされる場合があります。背景には強い課題意識とソリューションへの興味があると考えられ、そのような人に出会ったら、その場で「もう一度お話を聞かせていただけませんか?」と一歩踏み込みます。またインタビューの最後には必ず「また連絡しても良いですか?」と次に繋げるためのコミュニケーションをします。

  3. プロジェクトメンバーからのシグナルを捉える
    インタビュー結果分析をしているときに「○○さんにもう一度話を聞きたい」といった声や、プロトタイピング中に「○○さんならこの機能に対してなんて言うだろうか?」といった声があがることがあります。その声の背景にはもう一度話を聞くことで課題が深く理解できるといった期待や、プロトタイプに対する的確な指摘を受けたいといった期待があると考えられ、そのような声が挙がったらそのティーチャーカスタマー候補にアプローチして次のアポイントを取ります。
 
 

よくある3つのアンチパターン

ティーチャーカスタマーとの関係はサービス開発に大きなメリットをもたらしますが、「先生」の言う通りにすればよいわけではありません。次のようなアンチパターンに陥らないように、客観的/分析的な視点を持ち、主体は企画開発者である自分たちであることを忘れずにうまく付き合っていくことが大事です。
 
  1. 「イエスマン」な企画開発者
    ティーチャーカスタマーの意見に優先順位付けを行わず、すべての要望に「はい」と答えてしまう。
    結果として、製品の焦点がぼやけ、開発が混乱してしまいます。

  2. フィードバックの「ブラックホール化」
    フィードバックを熱心に収集するものの、それに対して何もアクションを起こさず、ティーチャーカスタマーへの報告も怠ってしまう。これはティーチャーカスタマーの協力意欲を削ぎ、信頼を失ってしまいます 。

  3. 「What」に囚われ、「Why」を忘れる
    ティーチャーカスタマーがその機能を通じてどのような価値を実現したいのか「Why」を理解する前に、機能の仕様「What」の詳細な議論に陥ってしまう。製品の価値が曖昧になり、魅力のない製品になってしまいます。
  
 

「ティーチャーカスタマー」を探しにいきましょう

新サービス開発において「ティーチャーカスタマー」の伴走があるとスピードと精度を格段に高まります。大切なのは、完璧なサービスができてから顧客の声を聞くのではなく、不完全なうちから顧客を巻き込み、共創する姿勢です。
mctでは、デザインリサーチで培った顧客理解の力を基盤に、お客様のサービスが持つ独自の価値を、顧客にとって本当に価値ある体験に落とし込み、プロトタイピングと仮説検証を伴走支援しています。 
 
 

プロトタイプを用いてユーザー検証のプロセスに伴走支援

新規事業開発チームに伴走してきた経験を活かし、検証すべき観点の整理から、検証に適したプロトタイプの定義、制作までを一気通貫で支援します。
 
 

mctのUI/UXデザインサービス

弊社mctのUI/UXデザインのサービスをまとめた資料を以下よりダウンロードいただけます。
 
mctではプロジェクトのMVPの要件定義後のプロトタイピングから実装に向けたUI/UXデザインまで、お客様の状況やフェーズに応じて柔軟に対応し、多様なアウトプットをご提供することが可能です。
アウトプット例_ワイヤーフレーム_デザインモックアップ_デザインガイドライン
アウトプット(制作物)の一例
 

mctのUI/UXデザインサービスは、単に「見た目が良いデザイン」を作るだけではありません。デザインリサーチで培った顧客理解の力を基盤に、お客様のサービスが持つ独自の価値を、顧客にとって本当に価値ある体験に落とし込むお手伝いをします。
 
【顧客課題やサービスコンセプトは明確になったものの、それを本当に価値ある体験としてUI/UXに落とし込むプロセスにお困りの企業様】 は、ぜひ一度mctにご相談ください。私たちと一緒により良い顧客体験をデザインし、ビジネスの成功を目指しましょう。
 
サービスに関するご質問やご相談は、お気軽にお問い合わせください。
 
 

【資料ダウンロード】mctのUI/UXデザイン・ソリューション

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