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2025.06.19

Series|顧客エンゲージメントを高めるUI/UXデザイン―第2弾:行動心理学を活用したデザイン手法



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「顧客エンゲージメントを高めるUI/UXデザイン」をテーマに
お届けしている本シリーズ、第2弾のテーマは、行動心理学を活用した「行動デザイン」です。
単なる「使いやすさ」を超えて、ユーザーの深層心理に働きかけ、
自然な行動変容を促す「行動デザインの力」についてご紹介します。
 
 

 

なぜ、Duolingoで言語学習を続けられるのか?

「今日も英語の勉強をしなきゃ」と思っているのに、なかなか続かない...。
そんな経験はありませんか?
しかし、Duolingoを使っている人の多くは、なぜか毎日続けられるようです。
 
朝起きると、あの緑のフクロウからの通知が気になって、ついアプリを開いてしまう。
「今日で学習85日目!」という数字が見えると、なんだか嬉しくなる。
 
これは偶然ではありません。
「行動デザイン」という心理学的アプローチによって緻密に設計された体験なのです。


「使いやすい」のに、使われないUXの現実

「直感的で使いやすいデザインなのに、なぜかユーザーが思ったように行動してくれない...」
UXデザインでは、現状のユーザージャーニーマップを描き、問題点を特定して、理想のジャーニーマップを作成するという流れが一般的です。

しかし、その「理想」は「誰にとっての理想」なのでしょうか?

多くのUX施策が機能しない最大の理由は、企業側の期待や都合が強く反映された「理想のジャーニー」が、ユーザーの現実の行動パターンとかけ離れているからではないでしょうか。

• 「ユーザーはここでサインアップするはず」なのに、ほとんどの人が離脱
• 「このボタンは目立つから絶対にクリックされるはず」なのに、コンバージョン率が上がらない
 
これらは、ユーザーの深層心理や行動パターンに対する理解が不足している証拠なのかもしれません。
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行動デザインの秘密: ユーザーが「自然に」望ましい行動をとる仕掛け

行動デザインとは、「ユーザーが自然に望ましい行動をとれるように設計されたUX」です。
「使いやすいUX」ならば、ユーザーは「使える」かもしれませんが、「使いたくなる」とは限りません。

mctの行動デザインアプローチは、3つの要素から成り立っています。

1. ユーザーインサイト: 潜在的な動機や心理的障壁を深掘り
2. 行動パターンに基づくジャーニーマップ: 実際のユーザー行動に基づいた設計
3. 自然な行動を促す体験デザイン: 心理学の知見を活用した細やかな工夫
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このアプローチは、ユーザー体験向上だけでなく、後述するビジネスKPIの改善にも直結します。


行動をデザインする: mctが提唱するフレームワーク 

mctでは、おもにふたつのフレームワークを使って、ユーザーが自然に望ましい行動を取れるように体験をデザインします。

1. COM-Bモデル:行動の3要素を設計する

COM-Bモデルは、「人がある行動をとるためには何が必要か」を分析するためのフレームワークです。
 
1. 能力(Capability): 「できる」要素 例)複雑な操作をシンプルにする
2. 機会(Opportunity): 「機会がある」要素 例)適切なタイミングで通知を送る
3. 動機(Motivation): 「やりたい」要素 例)達成感を視覚化する
この3つの要素がそろったとき、初めてユーザーは行動を起こします。どれか一つでも欠けると、行動は生まれません。
 

2. エンゲージメントループ:持続可能な行動サイクルを設計する
エンゲージメントループは、繰り返し行動を促し、習慣化させるための循環的なフレームワークです。
 
1. 動機(Motivation): ユーザーの内発的・外発的動機を引き出す
2. トリガー(Triggers): 適切なタイミングで行動のきっかけを提供する
3. アクション(Action): シンプルで実行しやすい行動を設計する
4. 報酬(Reward): 即時的で魅力的な報酬で行動を強化する
5. 投資(Investment): ユーザー自身が価値を創造する機会を提供する
6. 進展(Progression): 成長や進歩を可視化し、次の行動への動機を生み出す 
このループにより、ユーザーは自然と製品の継続的な利用者となります。
 
 

ユーザーの心をつかむUXを作る: mctの4ステップメソッド

mctでは、行動デザインを実践するための4ステップメソッドをご提供します。

STEP 1:目標設定 — ビジネスとユーザーの接点を見つける
ビジネス目標(売上増加、ユーザー獲得など)とユーザーの自然な行動(問題解決、達成感など)の接点を特定します。

STEP 2:行動分析 — COM-Bモデルで深層心理を紐解く
COM-Bモデルを使ってユーザーの行動パターンを分析し、「なぜそうするのか」「何が行動を妨げているのか」を理解します。

STEP 3:ビヘイビアプラン — 実現可能な理想の行動パターンを描く

分析結果を基に、ユーザーにとって自然で実行可能な「理想の行動パターン」を設計します。企業の願望ではなく、ユーザーの行動可能性に基づいています。

STEP 4:エンゲージメントループ — 持続可能な行動サイクルを設計する

一回限りでなく繰り返し行動してもらうための「エンゲージメントループ」を組み立て、ユーザーが「自然にやりたくなる」体験を生み出します。
 
 

行動デザインがもたらすビジネス効果

行動デザインは、ビジネスKPIに直接的なインパクトをもたらします。

エンゲージメント向上: 「使う」から「習慣にする」へ
1. アクティブユーザー数の増加: 行動デザインの原則を活用して毎日の利用を促進
2. セッション頻度と長さの増加: 適切な報酬システムによりユーザーの自発的な利用を促進
3. 離脱率の低減: 特に重要な新規ユーザーの最初の数日間の体験を最適化

コンバージョン率アップ: 「考える」から「行動する」へ
1. 心理的障壁の除去: 不安や迷いといった行動の障壁を取り除く
2. 意思決定の簡素化: 複雑な意思決定プロセスをシンプルにする
3. 社会的証明の活用: 「〇〇人がこの商品を購入しました」といった要素で購入を後押し

ユーザー満足度向上: 「使える」から「感動する」へ
1. 期待を超える体験: 「なんだかすごく使いやすい」という感覚を生み出す
2. フラストレーションの減少: 行動の障壁を特定して取り除く
3. ブランドロイヤルティの向上: 満足度の高い体験を通じてブランドへの信頼を構築


成功事例: Duolingoに見る行動デザインの威力
冒頭にもご紹介した「Duolingo」は行動デザインの成功例としてよく語られます。
世界で3億人以上が利用する言語学習アプリとして、ユーザーの継続率を劇的に高めることに成功しているのです。
行動デザインのフレームワークで見てみると、下記のようなポイントが見てとれます。
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COM-Bモデル
能力(C): 短く達成可能なレッスン、段階的な難易度設定
機会(O): パーソナライズされたリマインダー通知
動機(M): 連続学習日数のカウンター、レベルアップシステム
 
エンゲージメントループ
トリガー: 毎日同じ時間にリマインダー通知
アクション: 5分で完了できる短いレッスン
報酬: 即時フィードバック、XP獲得
進展: スキルツリーの成長、ストリークカウンターの増加

この緻密な設計によって、平均的なユーザーは「週に5日以上アプリを使用」し、34%のユーザーが「1年以上継続する」という驚異的な結果を達成しているそうです。

 

まとめ: 行動デザインで差別化されたUX体験を創り出す

「使いやすい」だけのUXから一歩進んで、ユーザーが「自然に望ましい行動をとる」体験設計のために、mctでは、行動科学の知見とUXデザインの実践を融合させた独自の行動デザインアプローチでご支援いたします。

1. 科学的根拠に基づいた手法: COM-Bモデルやエンゲージメントループなど、行動科学の研究に裏付けられたフレームワークを活用
2. ユーザー中心のプロセス: ユーザーの実際の行動パターンと心理的要因に基づいたデザイン
3. ビジネス成果への直結: エンゲージメント向上、コンバージョン率改善など、具体的なビジネスKPIの改善を実現
4. 継続的な最適化: データに基づく継続的な体験の最適化を支援

ユーザーの心と行動をつかむ魅力的な体験を実現し、ビジネス成果を向上させるための「行動デザイン」導入について、ぜひご相談ください。




 

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