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2025.11.19

Blog|「組織デザインの時代」は本当に来ているのか? ― 制度から構造へ、構造から意味へ



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mctは、顧客体験(CX)と従業員体験(EX)を統合的にデザインする、日本発の組織デザインファームです。
組織構造や制度にとどまらず、「組織文化」「コラボレーション」「チームビルディング」「リーダーシップ」「共創」「人材育成」「ワークスタイル」など、人と組織が創造的に進化する仕組みをデザインしています。
 
本記事では「組織デザイン」というワードについて考えます。 
 

 
 
近年、「組織デザイン」という言葉をよく耳にするようになりました。人的資本経営、エンゲージメント、リスキリング、心理的安全性──。企業のテーマは「人」と「組織」の関係性へと急速にシフトしているように見えます。
 
しかし、多くの現場で“組織デザイン”と言われていることを見ていると、それは依然として制度や組織図を整えるレベルにとどまっていることが多いようにも感じます。本当に「組織デザインの時代」は来ているのでしょうか。
 
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制度から構造へ ― 「仕組み」ではなく「流れ」をつくる

組織変革というと、まず評価制度や報酬体系、組織階層の見直しが挙がります。ですが、制度を変えるだけで人が変わるわけではありません。制度はあくまでも“表層の仕組み”にすぎず、人の行動やコラボレーションを左右するのは従業員の関係性や情報の流れ方です。
たとえば、承認ルートが長い会社では、どれだけ「心理的安全性」を掲げても意思決定は遅く、発言は上層部に吸い上げられるだけで終わってしまいます。逆に、ネットワーク型の構造では、情報が水平に流れ、組織の枠組みを越えて全員が即座に学び合います。
 
組織デザインとは、こうした“意思の構造”を設計することです。「誰が権限を持つか」ではなく、「どこで意思が生まれるか」。制度が「壁紙」だとすれば、構造は「骨格」である。美しい壁紙をいくら貼っても、骨格が歪んでいれば組織は機能しないのです。
 
 
 

構造から意味へ ― 組織の“物語”を再構成する

さらに重要なのは、構造の次にくる「意味」の層です。どんなにフラットで柔軟な構造を整えても、人々が「なぜこの組織に属しているのか」という問いを共有していなければ、その組織は簡単に空洞化してしまうでしょう。つまり目的が曖昧なまま自由度だけを高めれば、個人の価値観がバラバラに増幅し、“心理的安全性”より“心理的分断”が生まれてしまうのです。
 
意味のデザインとは、組織の物語を再構成することです。経営理念を掲げることではなく、日常の会話や意思決定のなかで「私たちは何を大事にしているのか?」を対話として持ち続ける仕組みをつくる。キャリア開発も「昇進」ではなく、「ストーリー共有」として設計する。この“意味の対話”こそが、制度や構造を生かす駆動力になるのです。
 
 
 

デザインとは「整えること」ではなく「問い直すこと」

本来のデザインとは「美しく整えること」ではなく、問いを立て、意図をもって構成する行為です。組織デザインもまた、「この組織は何のために存在するのか」「どんな関係を育てたいのか」という問いを更新し続ける営みです。 制度 → 構造 → 意味という三層を貫いて、“機能”から“意味”へと進化する組織だけが、変化に強いチームとして持続していきます。「組織をつくる」よりも「組織を問い続ける」。この態度こそが、組織デザインの時代に求められる最も人間的で、創造的なデザインの力だと言えるでしょう。

その意味では、「組織デザインの時代」はまだ“到来”していないのかもしれません。私たちはいま、その入口に立ち、もう一度「組織とは何か」を問い直すフェーズにいます。そして確かに、組織が「仕組み」から「関係」へ、そして「意味」へと進化する流れは始まっています。その変化を本当の意味で推し進めていくのは、制度でもツールでもありません。一人ひとりが“問いを持って関わる”という姿勢そのものなのです。
 
 
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