2024.10.01
(第7回)技術探索支援のナインシグマ・ジャパン社との取り組み
昨年度からmctは技術探索支援のナインシグマ社とコラボレーションし、顧客探索と技術探索の両面から新規事業開発を支援しています。今回はこの1年の取り組みについて、ナインシグマ・ジャパン、マネージャーの若宮氏と振り返りました。
ナインシグマ社は、2006年の日本進出以降、国内企業のオープン・イノベーション活動の支援を行ってきました。日本に「オープン・イノベーション」という言葉が浸透する前から企業のニーズと世界中の技術とのマッチングに取り組んできた、いわばオープン・イノベーションの老舗です。具体的には、依頼主である大手製造業者のオープン・イノベーションを支援しており、例えば、依頼主企業が単独で解決することが困難な研究開発上の課題に対して、解決策を世界中から探し出したり、新規事業で必要な技術や顧客基盤を補完するために、該当する世界中のスタートアップを厳選してアプローチするなどのサービスを提供しています。
若宮 俊太郎氏
東京工業大学 大学院理工学研究科化学工学専攻 修了。花王株式会社を経て、株式会社ナインシグマ・ジャパン入社。自身のバックグラウンドである化学やエンジニアリング分野のみならず、自動車、材料、機械分野なども対象に幅広くオープン・イノベーション活動を支援。メンバーの中でも日系メーカーでの社歴が長く、研究開発の上流ではなく、生産技術という下流を主に担当しており、R&Dの流れと現場に精通している。
オープン・イノベーションを推進する難しさ
mct:若宮さんと一緒にセミナーやプロジェクトを取り組みはじめて1年になりますが、これまでの活動をどのようにとらえていますか?
若宮:オープン・イノベーション支援事業者のパイオニアとして、我が社自身、自社だけでは依頼主に提供できない価値については、他の会社様と一緒に提供していかなければいけないと感じています。その点で、弊社が特に強みとしている技術探索の強みと、御社のデザイン思考の考え方がうまくマッチしていくのではないかと考えており、今年は1年目にしてはうまく連携できたのではないかと感じています。
mct:そうですね、双方において、クライアントに提供できる課題解決の幅が広がっている印象を受けています。
若宮:実際、あるメーカーが保有している技術について、その用途仮説を探索するセッションを、先日貴社と一緒に行わせて頂きましたが、有識者とのコラボレーションをおこなったり、御社のファシリテーションからアイデア出しを行ったりしていただき、クライアントに非常に喜んでいただけました。
mct:技術シーズの側面から考えるだけではなく、デザイン思考を取り入れた新しいインスピレーションが、研究者のみなさんの発想を広げるヒントになったのでしょうか。
若宮:思考フレームが自社内で固まってしまっている研究者には、外部からの刺激を与えることにより、シーズ起点からニーズ・顧客起点へマインドセットを変革させることの重要性を感じています。ただし、そのように研究者のマインドセットが変わっても、その流れが社内全体にまで広がるのは難しいところもあります。近年は特に新規事業の創出を目的としたオープン・イノベーションが非常にはやっていますが、大企業では新規事業開発に取り組もうとする一方、新しいことにチャレンジする取り組みを中々認めてくれない場合も多いですし、認めてくれたとしても、新規事業開発の取り組みを、既存事業と同じ評価軸で判断されて、評価されないといったところがオープン・イノベーション担当者のボトルネックになっていると感じてます。
mct:社内の組織や文化に壁がありそうですね。
若宮:そういった壁にぶつかってもくじけないためには、この技術を使って何かを達成したいといった担当者の相当の熱意がなければ新規事業開発を中々難しいと感じています。
アイデアをどのように絞り込んでいけばいいのか?
mct:新規事業開発を目指す方や技術者の方はどのような課題を持っているのでしょうか?
若宮:企業の方からは、「アイデアはたくさんあるんだけれども、その中でどれが新規事業の芽になり得るものかというスクリーニングの方法がわからない」と言った声をよく聞きます。アイデアがある中でどう絞り込むのかを生み出せるようなツールがあればいいかもしれませんね。
mct:なるほど。企業体制や文化による影響もありますが、若宮さんが指摘するように担当者のモチベーションを上手く取り入れるようなアイデアスクリーニングを開発できると面白そうですね。
若宮:ただ一方で、担当者のモチベーションだけでそのアイデアを推進することを会社側は許容しないでしょうから、そのあたりは客観的な指標でバランスを取りながら、という形になるかもしれないですね。
mct:そういった意味では、客観的な指標と主観的な指標を取り入れて判断する、テーマ探索のフレームワークはそのヒントになるかもしれないですね。
オープン・イノベーションの大切さを伝える
mct:オープン・イノベーション実践セミナーにてmctが登壇する企画もありました。
オープンイノベーション実践セミナー参照。
若宮:そうですね、東京は4,50人、大阪は2,30人の方にお越しいただけました。ご来場いただいた方は、R&D部門の方が多い印象を受けました。
mct:我々も大変貴重な体験でした。当日配布している資料や、ウェブサイトで公開している技術公募※を見るだけでも、オープン・イノベーションの進んでいる企業は活発に活動されていますよね。
※ナインシグマ社のウェブサイトでは探索技術の一部をオープンに公開して技術公募を実施している。
http://www.ninesigma.co.jp/list/
若宮:そうですね。我々としては定期的な情報発信の場としてセミナーを開催していて、オープン・イノベーションの大切さを伝え、技術者の方々の意識を啓蒙しています。すでに実績のある企業事例を出すと危機感を感じる方が多いようです。
mct:我々もビジネス創造支援ネットワークとしてDMN(ダイヤモンド・デザインマネジメント・ネットワーク)やConvivial Salonを運営しています。今度は若宮さんにぜひ技術探索というテーマで登壇いただき、オープン・イノベーションについて参加者と議論する機会を参加者の皆さんに提供できればと考えています。
若宮:こちらこそよろしくお願いします。
mct:今年もよろしくお願いいたします。
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