2024.09.29
Series Blog ZMET 第3回:ZMETの結果をどう活用するか?
心の概念構造を解き明かすインタビュー手法 “ZMET” について、全8回でお届けいたします。
第1回はZMETの概要を、第2回はZMETの事例をお伝えしました。
第3回のテーマは「ZMETの結果をどう活用するか?」です。
ビジネスにおいて顧客の考える“WHAT”や“WHY”も非常に大切ですが、ZMETのユニークさを表現するなら、やはり顧客の考える“HOW”に着目するという点でしょう。ZMETの生みの親であるジェラルド・ザルトマン教授も、本手法について言及した著書に“HOW CUSTOMERS THINK”というタイトルを付けています。
ここで言っている「顧客の考える“HOW”」とは、「人々が意思決定の際に無意識に使っている認識の枠組み」のことです。第1回の記事でもお伝えした通り、この枠組み(フレーム)が物事の意味づけに決定的な役割を担っています。
例えば、人は「買い物をする」ということについて、どのような認識の枠組みで捉えているでしょうか? 以下はザルトマン教授の著書からの引用です。
フランス、日本、インド、エジプト、アメリカなどの消費者は一様に、買い物を旅行に喩えて表現することがわかった。文化的背景は異なっていても、買い物プロセスを、旅行における道標や、行き先、苛立ち、驚き、成功、失敗、自己達成感になぞらえて認識していた。
その旅では、消費者はちょっと寄り道をして、驚きや興奮を経験したり、トラブルに巻き込まれたりすることがある。この旅を通して、消費者は、誘惑に負けたり、店長と対決したり、限られた資金をやりくりしたり、そしてバーゲン品や家族へのお土産を手にして家路につくなど、典型的な旅に含まれる要素を経験する。買い物の旅を通じて様々な出来事に繰り返し遭遇し、経験を積むにしたがって、彼らはより経験の浅い消費者にとって頼れるアドバイザーとなる。
*『心脳マーケティング』(原題:HOW CUSTOMERS THINK)P170,P311より引用
ちなみに「あなたは買い物について、どのような認識の枠組みで捉えていますか?」とストレートに聞いても、よい答えは得られません。そこでZMETでは、無意識を可視化させるべく、画像を駆使してインタビューを進めるのですが、今回の記事では、プロセスではなく、その結果をどのように活用できるか、という点について考えてみましょう。
方向性としては、大きく2つのアプローチが選べると思います。
1.顧客の認識の枠組みに沿う
2.顧客の認識の枠組みをあえて裏切る
1は、ZMETの結果を素直に活用するアプローチです。顧客の認識の枠組みに沿ってコミュニケートすることで、人々はその意味がすんなり理解できるようになり、「この企業は自分のなりたい気持ちをわかってくれている」というロイヤリティを高めることが期待できます。上記の例で言えば、「旅」の要素(興奮・誘惑・ハプニングなど)が現状ほとんど見当たらない業界の買い物体験を改善する際に、特に有効でしょう。
2は、逆説的なアプローチです。「顧客がこのように認識する」とわかっていながら、あえてそれを裏切ることで、新しい驚きを提供します。パラダイムシフトを起こすことは容易ではありませんが、闇雲に新しさを追うわけではなく、ZMETで明確になった「現状の枠組み」を破壊すればいいので、成功の確率は上げられます。上記の例で言えば、「旅」のパターンが出尽くしている業界の買い物体験を改革する際に、特に有効でしょう。
1と2どちらのアプローチを選ぶにせよ、人々の認識の枠組みを知ることが肝要なプロジェクト(パーパス経営の浸透/ブランドの変革/行動変容のデザインなど)において、ZMETはその威力を発揮するメソッドです。
今後の記事でも引き続きZMETの魅力をお伝えしますので、ぜひご期待ください。
Series Blog ZMET 第1回:従来のリサーチと異なるメソッド “ZMET”とは何か?
Series Blog ZMET 第2回:医師や患者の心を解き明かすZMETインタビュー
Series Blog ZMET 第3回:ZMETの結果をどう活用するか?
Series Blog ZMET 第4回:世界中で活用されているZMET
Series Blog ZMET 第5回:ZMETで創る独自のブランド体験
Series Blog ZMET 第6回:ZMET調査のプロセス
Series Blog ZMET 第7回:これまでのシリーズブログの振り返り
Series Blog ZMET 第8回:マルチクライアント型 ZMET調査
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Nobuo Masuda
株式会社mct エスノグラファー/エクスペリエンスデザイナー
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