2024.09.29
Series Blog ZMET 第4回:世界中で活用されているZMET
心の概念構造を解き明かすインタビュー手法 “ZMET” について、全8回でお届けいたします。これまでのシリーズブログでは「ZMETの概要」「医療分野での活用事例」「ZMETの活用方法」というテーマでご紹介してきました。第4回目はZMETの開発元OZA社を取り上げ、ZMETの誕生秘話やグローバルでの実績をご紹介します。
ZMETの起源
ZMETは1990 年代初頭にハーバードビジネススクールのジェラルド・ザルトマン教授によって開発されました。ネパールで休暇を過ごしていたザルトマン教授は、研究に「イメージ」を活用することを考案。そしてネパールの地元住民に使い捨てカメラを渡し、村の生活を説明できるような写真を撮ってもらうことで、旅の記録を残すことにしたのです。
住民に写真の意味を説明するよう求めたところ、写真からは言語化しづらい考えが浮かび上がってきました。例えば、写真には住民の足が入っていなかったのですが、ネパールでは裸足は貧困の証でもありました。貧困にまつわるスティグマがあるため、言葉だけで村の生活を説明するよう求めていたら、この話題は浮上しなかったことにザルトマン教授は気づきました。
グローバルで支持されているZMET
その後、ザルトマン教授はハーバード大学のMind of the Market Laboratoryを設立し、25年以上にわたって活動を続けています。現在はOZA社として、17 の業種にわたるクライアントのブランドのポジショニング、新製品開発等に関する戦略立案を支援してきました。世界 40 か国で 2,000 以上の実績があり、4,000以上の学術出版物や業界出版物にも引用されています。
ZMETはビジネスインパクトに貢献
前述のようにZMETはイメージやメタファーによって「人間が無意識に使っている認識の枠組み」や「潜在的なニーズ」を理解する強力な手法です。そのことがわかる事例を2つご紹介します。
飲料メーカー|Molson Coors Group
- 課題:2018年のアメリカでは若者のビール離れが目立ち、大手ビールメーカーは苦境に立たされていた。Molson Coors Groupの主力ビール「クアーズ・ライト」の売上も4.1%ダウン。
- ZMET調査からのインサイト:同商品がこだわってきた“冷たさ”が満たす人間の欲求とは何か?愛飲者へZMET調査を実施した。その結果、Z世代やミレニアル世代は仕事、家族、人間関係、テクノロジーの中でノンストップでストレスとプレッシャーに晒されており、冷静になれる時間を求めていることがわかった。
- 展開した施策:「クアーズ・ライト」は、常時オンの世界で“オフ”の時間を提供するリフレッシュメントとして「MADE TO Chill」キャンペーンを実施。
- ビジネスインパクト:ハイテンションなビール広告の世界に反旗を翻し、売上の4.4%アップに貢献した。
補聴器メーカー|Oticon
- 課題:難聴者の約80%が医療専門家の勧めにも関わらず補聴器の装着を拒んでいた。補聴器を装着することへの「スティグマ」が根本的な要因で、議論のしづらさに繋がっていた。
- ZMET調査からのインサイト:難聴者は「難聴によって自分だけの世界におり、その世界は嘲笑を恐れたり、敵意のある外の世界からは安全だが孤立していた。一方、補聴器は自分に欠陥があると世間へ知らせるシグナルになっていること」がわかった。
- 展開した施策:このインサイトを受けて、オーティコン社は「TRANSFORMATION(変革)」というメッセージに基づき「自分を理想の状態」に変化させ、「自分を取り巻く世界を全く新しいものに変える」ことを期待させるような新製品を開発。新しい補聴器はファッショナブルなデザインとなり、「聴覚を補うもの」から「聴覚のための新たな機器」へとリフレームを図った。
- ビジネスインパクト:国際コンシューマー・エレクトロニクス・ショーで「ベスト・オブ・イノベーション」を受賞、新規ユーザー獲得コストの40%の削減に繋がった。
mctは日本企業で唯一ライセンスを保有
このようにグローバルでは導入実績の多いZMETですが、日本企業では唯一、mctがOZA社からライセンスを受けZMET調査を実施しています。こちらの動画はPepsi・IBM・Bank of America 等の大規模なプロジェクトを主導し、これまで1400を超えるZMETインタビューを実施してきたOZA社のJames Forr氏とのインタビュー動画です。「リサーチにメタファーを使うメリット」「ZMETで得たインサイトの活用方法」等をご紹介しておりますので、ぜひ関心のある方はご覧ください!
Series Blog ZMET 第1回:従来のリサーチと異なるメソッド “ZMET”とは何か?
Series Blog ZMET 第2回:医師や患者の心を解き明かすZMETインタビュー
Series Blog ZMET 第3回:ZMETの結果をどう活用するか?
Series Blog ZMET 第4回:世界中で活用されているZMET
Series Blog ZMET 第5回:ZMETで創る独自のブランド体験
Series Blog ZMET 第6回:ZMET調査のプロセス
Series Blog ZMET 第7回:これまでのシリーズブログの振り返り
Series Blog ZMET 第8回:マルチクライアント型 ZMET調査
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Mana Shimooka
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