2024.09.27
Blog|行動変容COM-B 第3回:「興味がない人」の行動をどう変えるか?
手前味噌にはなりますが、mctのスタッフは、顧客と進めているプロジェクト、及び、そのプロジェクトに深みを与えるための手法開発に非常に高い関心を持っています。ただ、その反動によるものか、会社内の事務的な手続きにはやや関心が薄い一面が・・・。
そんなメンバーが乗り気でない事務手続きのひとつに「就業時刻を(厳密に)記録すること」があります。※mctはフルリモートのワークスタイルであるため、手動で就業時刻の記録を行う必要があります。
今回の記事では、行動変容のフレームワークであるCOM-Bを「興味がない人」へのアプローチにどう活用するかについてご説明したいのですが、この、mctメンバーの就業時刻記録を題材にお話してみたいと思います。
果たして、COM-Bフレームワークを使うことで、mctメンバーの就業時刻記録への興味関心を高めることができるのでしょうか?
さて。実際にこのテーマで、mctメンバーにCOM-Bインタビューを実施してみました。
補足:もちろん全員が就業時刻の記録は行っていますが、「1分単位でつける」ことに抵抗感を感じるスタッフがいる、ということが課題です。
インタビューの結果、「ちょっとした休憩や宅配の受け取り等があるから、本来、正確になんてつけられない中で、1分単位でつけるという体裁をとるのがちょっとバカバカしいよね」という考えが根底にあることが判明。COM-BのM(Motivation)におけるブロッカーですね。
これだけを見ると、行動を変えてもらう要素はゼロに見えます。就業時刻を1分単位で記録してもクライアントと進めているプロジェクトの品質向上に役立たないことから見ても、Motivationが高まらないことは自明でした。
ただ、もう少し話を聞くと、ワンクリックで出勤/退勤を記録できるツールを使っている場合、そのクリックで「仕事が始まる、というメリハリの感覚を得られる」「記録を残す喜びがある」といった前向きな声を聞くことができました。すなわち、「ブロッカー」が存在する中で、やる気を高める潜在的な「ブースター」も同時に眠っていたことが分かったのです。
興味がない人へのアプローチには、二つの道筋があります。
一つは、上記のような潜在的なブースターを発見するアプローチ。サービスを利用し続けることに意味を見出せない、薬を飲み続けることに意義を感じないと考える人々にCOM-Bインタビューを行って、その人たちがあまり意識していなかったメリット(潜在的なブースター)を見出す方法。
もう一つは、ベルガンティ教授が提唱する「意味のイノベーション」のアプローチ。上記のコンテキストで言えば、1分単位で就業時刻を記録することに新しい意味を与えるという考え方です。例えば、1分単位の記録でインセンティブが出るようになるならば、『正確な記録で小遣いが稼げる』という別の意味が与えられますよね。
二つのアプローチは完全に独立している訳ではなく、例えば、潜在的ブースターを活用して『出勤/退勤のクリックで仕事のメリハリがつく』という意味を与えるのもアリだと思います。
・・・そういった諸々を織り込みながら就業時刻記録に関して社内の再告知を図り、就業時刻の(1分単位の)チェックに対する抵抗感が薄まった、ということを今回の話のオチとしたいと思います。以上、今回の記事では、「興味がない人」へのアプローチについて整理させていただきました。もちろん、これらのアプローチは、人々の役に立たないものを売りつけるためのアプローチではない点だけご留意ください。
次回の第4回目では、COM-Bに関するよくある質問「BtoBビジネスで行動変容は役立つの?」にお答えします。
BtoCビジネスは消費者の気持ちに左右される面も大きく、行動変容アプローチもイメージしやすいかと思います。一方「BtoBビジネスって商品のスペックで決まるだけじゃないの?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。「そうではないですよ」というのが次回に向けたメッセージです。
BtoB営業マンや製薬会社の営業担当(MR)の日々のアクションについて、何かしらの示唆をご提供できたらと思います。
【全5回の行動変容COM-Bシリーズブログ】
第1回:「行動を変える」ためのインサイトをどう見つけるか?
第2回:行動変容における「隠されたインサイト」
第3回:「興味がない人」の行動をどう変えるか?
第4回:「BtoBの行動変容」をどうデザインするか?
第5回:行動変容を促すためのアイデア開発手法
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Eric Frey
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