2025.05.29
Blog|DMN2025 どうすれば「学び」をデザインすることができるのか?

「学び」とは教えるのではなく、好奇心をきっかけに自然と学びたくなるような環境をつくることだと上田先生は話します。参加者は「絵を描くマシンづくり」に夢中になりながら、自分で考え、手を動かし、失敗から、学ぶ楽しさを体感しました。これからの時代に大切なのは、正解を知ることよりも、自分なりの問いを持ち続ける姿勢だと気づかされるセッションでした。
Learning Curiosity / 好奇心が広げる『学び』の無限の可能性 / 上田 信行氏
こんにちは! mctの下野です。
2025年度の「DMN(デザインマネジメント・ネットワーク)」が始まりました。オープニング講座では、上田信行氏によるレクチャー・ワークショップ・対話を融合した新しい学びのあり方を体験する場が提供されました。

講師紹介
上田 信行氏(以降、上田先生)/ 同志社女子大学名誉教授, ネオミュージアム館長
1950年、奈良県生まれ。同志社大学卒業後、『セサミストリート』に触発され渡米し、セントラルミシガン大学大学院にてM.A.、ハーバード大学教育大学院にてEd.M., Ed.D.(教育学博士)取得。専門は教育工学。プレイフルラーニングをキーワードに、学習環境デザインとラーニングアートの先進的かつ独創的な学びの場づくりを数多く実施。
https://ddmn.jp/sessionschedule/detail/post-5229/
1950年、奈良県生まれ。同志社大学卒業後、『セサミストリート』に触発され渡米し、セントラルミシガン大学大学院にてM.A.、ハーバード大学教育大学院にてEd.M., Ed.D.(教育学博士)取得。専門は教育工学。プレイフルラーニングをキーワードに、学習環境デザインとラーニングアートの先進的かつ独創的な学びの場づくりを数多く実施。
https://ddmn.jp/sessionschedule/detail/post-5229/
目次 1. Curiosity(好奇心)と「学び」について 2. 「教育のデザイン」から「学びのデザイン」へ 3. いじくりまわして絵を描くマシンを作ろう(Tinkerable) 4. なぜ好奇心が生まれたのか? 5. Learning Curiosityを仕事で取り入れていくために |

1. Curiosity(好奇心)と「学び」について
変化の激しいビジネス環境において、成長し続けるために最も重要なのは「学び続ける力」です。しかし、多くの人が「学習」の本来の楽しさや可能性を十分に理解できていないという現実があります。近年、リスキリングや人的資本経営の重要性が高まり、企業においても「人がどのように学び、成長するか」が問われる時代になっています。
本プログラムでは、「好奇心」を軸にした学びのマインドセットとは何かを、自らの体験を通じて理解し、学び続ける人材について自分の言葉で言語化していきました。まずはウォーミングアップとして「周りにいる好奇心がある人・組織にはどのような特徴があるのか」について、参加者同士で語り合いました。「新しい取り組みやコミュニティに参加することに抵抗が少ない人」や「いつも快活・元気でポジティブな人」といった意見が出ていました。

弊社米本は、仕事における好奇心の有無を「ギフトとタスク」という観点で整理しました。好奇心がない人・組織は仕事を「滞りなく完了すること」として捉え、会社から与えられた業務を遂行することをゴールと考えるタイプ。一方で、好奇心がある人・組織は仕事を「顧客が喜んでくれること」として捉え、よりよい成果に向けて主体性を持って取り組むタイプです。大切なのは、1人の人間の中にどちらの側面もあること、そして置かれている環境や組織によっても影響を受けるということです。
では、仕事における「好奇心」をどうすれば醸成し、維持し続けることができるのか?この問いをもとに、上田先生のセッションが始まりました。
2. 「教育のデザイン」から「学びのデザイン」へ

上田先生のプロフィールにも記載されているように、上田先生は米国で教育学を学ぶ中で、インストラクションデザイン(教える側が主導し、知識やスキルを体系的・効率的に伝える研究)だけでなく、いかにその環境の中で学びを最大化できるかに注目されました。これは「学習環境デザイン」という領域で、教え方・伝え方の研究ではなく、学びを最大化するために学習者が主体となり学びが自然に起こるように支援する場を整えるという考え方です。
そして、学習者が主体的になる、自ら学びに対して前向きになる原動力の1つが「好奇心」です。この好奇心を生み出すための仕組みについて、実際にワークショップを通じて体験し、その過程を振り返ることで言語化を試みました。
3. いじくりまわして絵を描くマシンを作ろう(Tinkerable)

体験のテーマは「絵を描くマシンを作ろう」でした。設計図や作成手順のようなものは一切なく、渡されるのは小さなモーターと電池とペンと素材のみ。後は二人組で試行錯誤しながら「絵を描くマシン」について、自分たちで考え、試行錯誤し、いじくりまわしながら、少しずつ前進していきます。
上田先生は「Tinkerable」という表現でこのワークを紹介していましたが、Tinkerableとは、学ぶ人が「自分で触って試せること」を通じて学びを深めていける状態や教材のことであり、自律的・創造的な学びを促進するための鍵となる考え方です。まさに体験を通じて好奇心を育み学びに繋げていく活動と言えるでしょう。

最初に構想を考えるチーム、とりあえずモーターを回してみるチーム、ペンを素材に貼り付けるチーム—それぞれが思い思いに頭と手を動かし、作っては動かし、そこで得られた気づきをもとにブラッシュアップを行い、百人百様のマシンが出来上がっていきました。この時点で、参加者はまるで小学生のころに戻ったかのように目をキラキラさせながら、「好奇心を持って学ぶことを楽しむ」スタンスでワークに取り組んでいました。

4. なぜ好奇心が生まれたのか?
では、なぜこのワークにおいては「好奇心を持って学ぶことを楽しむ」ことができたのでしょうか?そして、なぜ仕事において「好奇心を持って学ぶことを楽しむ」ことができていないのでしょうか?この体験を通じて、それぞれの言葉で言語化していきました。

ある参加者は「うまく動かないことでマシンに対して愛着を感じるようになり、動かしてあげたいという気持ちになった」と、失敗や想定外の出来事が好奇心につながったケースを共有。また別の参加者は「チームのメンバーから『とりあえずやってみよう』と言われたことで、失敗することへの恐れがなくなった」と、置かれている環境によって好奇心と遠慮とのバランスに変化が生まれたケースを紹介しました。

実はこの「自分の言葉で言語化すること」こそが「学び」であると上田先生は説明されました。「学び」というものは決して他人から与えられるものではなく、体験を通じて本人が感じ取ったことこそが真の「学び」なのです。
5. Learning Curiosityを仕事で取り入れていくために
上田先生は「学びというものは、知識を得ることだけではなく、体験を通じて自分の中に新たな視点や考え方を築いていくプロセス全体を指す」と語られました。そして、これからの不確実な時代において、最も大切なのは「答えを知っていること」ではなく「問いを持ち続け、好奇心によって学び続ける姿勢」であると。
上田先生の「Learning Curiosity / 好奇心が広げる『学び』の無限の可能性」というテーマは、単なる教育論にとどまらず、私たちのビジネスや生き方そのものを問い直す機会となりました。好奇心を持ち続け、学び続けることが、個人としても組織としても、これからの時代を生き抜く鍵となるでしょう。

DMN2025について
DMNとは、ビジネスデザイン、イノベーション、DXを学び、組織に改革を起こす人材育成のための年会費制プログラムです。参加者同士の議論を通じて学びを深める参加型のスタイルが大きな特徴です。
変化が激しく、将来の予測が困難な時代。だからこそ、未知の未来を見通し、新たなビジネスを創出し、推進できるマインドセットを持つ人材が求められています。持続的な成長を支えるイノベーション・デザイン・DX人材育成のための選択肢としていかがでしょうか?お試し体験やオンラインモニターなども募集していますのでお気軽にお問い合わせください。
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Fumihiro Shimono
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