2025.06.25
Blog|人間中心設計のその先へ -ノンヒューマン視点で描くデザイン-

このブログでは、動物や植物、環境などの人間以外の存在を仮想のステークホルダーとして
設計プロセスに取り入れる「ノンヒューマン・ペルソナ」という手法を紹介し、
より包括的で持続可能なデザインの可能性を提案しています。
新たな視点がもたらすデザインの可能性
「使いやすい」「快適」「直感的」——これらの言葉は、デザインが人々の生活を豊かにしてきた証拠でもあります。
人間中心設計のおかげで、私たちは多くの素晴らしいプロダクトやサービスに囲まれて暮らしています。
そして今、デザイン思考はさらなる発展を遂げています。近年、デザイン界では「誰の視点で考えるか?」という問いに対して、人間以外の存在にも目を向ける動きが生まれています。過疎地の住民、自然、動物、インフラにアクセスできない人々——これまで見過ごされがちだった存在への配慮を、デザインプロセスに組み込む試みです。
人間以外の存在の視点を取り入れることで、これまで気づかなかった課題を発見したり、まったく新しいインサイトを得ることができるかもしれません。
ノンヒューマンペルソナとはなにか
ノンヒューマン・ペルソナ(Nonhuman Persona)は、動物や植物、生態系、人工物、さらには気候やウイルスのような人間以外の存在を、仮想のステークホルダーとしてデザインの検討に取り入れる手法 です。
従来のペルソナが、年齢や職業、価値観といった属性を持つ「架空のユーザー像」を描き、 顧客のニーズを満たす設計を進めるためのガイドとして使われてきたのと同様に、 ノンヒューマン・ペルソナでは、製品ライフサイクルやビジネスエコシステムに影響を受ける環境、動物、見落としていた人々のニーズも表現できるようにします。
従来のペルソナが、年齢や職業、価値観といった属性を持つ「架空のユーザー像」を描き、 顧客のニーズを満たす設計を進めるためのガイドとして使われてきたのと同様に、 ノンヒューマン・ペルソナでは、製品ライフサイクルやビジネスエコシステムに影響を受ける環境、動物、見落としていた人々のニーズも表現できるようにします。
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たとえば:
- ・ 都市に暮らす鳥が街路樹の伐採によって巣作りにどんな困難を抱えるか
- ・ 新しい商業施設の建設によって、周辺の河川や土壌にどのような変化が起きるのか
チームメンバーが作った「鯉ペルソナ」 Templateは、 Life-centered design Labより
具体的なノンヒューマン・ペルソナの実践例
ノンヒューマン・ペルソナの先駆けともいえるプロジェクトは、2014年の国際環境NGO Conservation Internationalによるキャンペーン「 Nature is Speaking 」です。海洋、熱帯雨林、土壌などの自然が言葉を持ったら何を語るだろうか、というコンセプトで製作されたショートフィルムシリーズで、ハリウッド俳優たちが、ノンヒューマン視点のメッセージをパワフルに発信しました。
俳優のエドワード・ノートン氏の声による 「土のペルソナ」
また、実は私たちの身近にも、ノンヒューマン視点でのデザインは存在しています。 コロナ禍では、 病原体としてのウイルスや、 逼迫する医療資源、高齢者や基礎疾患を抱える人々の視点を「擬人化」し、 それぞれの関係性や行動を想定したうえで、 リモートワークシステムやオンライン診療、 非接触決済システムの再設計が行われました。 これらは、 非人間的な存在を仮想のペルソナとして扱うことで、より柔軟で持続可能なシナリオを構築した好例といえるでしょう。

このようにノンヒューマン・ペルソナは、人間中心の思考を否定するのではなく、それを補完し、より多角的で長期的な視野から意思決定を行うためのアプローチとして活用できるのです。
チームやプロジェクトへの活かし方
ノンヒューマン・ペルソナは、アイデアの発想を豊かにするだけでなく、実際のプロジェクトやデザインプロセスにおいても実践的に活用できます。
- たとえば、
・ 視点のバリエーションを増やすワークショップ: チーム全体が同じ問題に対し、異なる立場から思考を広げる
・ 倫理的・感情的なインサイトの発見: 数字やデータだけでは捉えにくい要素にもアプローチする
・ ブランドやプロダクトのストーリーテリング: 企業としての姿勢や哲学を、ユニークで共感される形で社会に伝える
こうした視点は、人間中心の発想と両立しながら、より包括的な意思決定を可能にします。
ノンヒューマン視点で描く、これからのデザイン
ノンヒューマン・ペルソナは、単なる思考の実験ではなく、サステナブルな価値創出のための具体的な手法として、国内外で少しずつ導入が進んでいます。
私たちが目指すのは、「人間の生活を豊かにする」だけではなく、「すべての関係性にとって調和のある設計」を実現することです。その視点を持つことで、プロダクトやサービスは単なる道具ではなく、環境や社会との関係性を映し出す“存在”としての意味を帯びていきます。
今後は、ノンヒューマン・ペルソナを実際のプロジェクトでどう導入するのか、ワークショップの設計方法や事例の紹介を通じて、より実践的な内容をお伝えしていく予定です。
私たちmctでは、ノンヒューマン・ペルソナの導入支援や、チームと共に視点を拡張していくための共創プログラムをご提供しています。ご興味のある企業さまは、ぜひお気軽にご相談ください。
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Sonoka Imagawa
株式会社mct デザインリサーチャー
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