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2025.07.09

Series|近未来小説:サスティナブルな世界へと続く道―#08(レジリエンス)最終回



近未来小説08
 

このブログは、いまから10年後にサスティナブルな経営を実現した皆さんが、どのような課題を
どのように解決してきたのかを振り返る、近未来小説です。最後のテーマは「レジリエンス」に焦点を当てています。
 
 

 

困難や不確実性に対応しながら、持続可能な未来を創造する 

10年前、世界は複数の危機が同時に進行する状況に直面していました。気候変動、資源枯渇、社会格差、パンデミック—これらの問題は個別に対処するには複雑すぎ、相互に関連していることが明らかになっていました。
 
OECD(経済協力開発機構)の「Resilience for Sustainable Development」レポートには「複合的危機の時代において、持続可能な開発の実現には統合的レジリエンスの構築が不可欠」と記載されていました。
 
#08-1_複合的危機の社会のレジリエンスを高める新たなアプローチ「システム全体のレジリエンス設計」
 

そんな中、社会のレジリエンスを高めるための新たなアプローチとして「システム全体のレジリエンス設計」という考え方が浸透していきました。これは単に問題から回復する能力だけでなく、危機を学びと進化の機会に変え、より良いシステムへと変革する能力を指します。
 
 例えば、ある町では大きな洪水被害をきっかけに、ただ堤防を高くするだけでなく、雨水をためる仕組みづくり、緑の多い公園の増設、住民同士の助け合いの強化、そして様々な産業を育てることを一緒に進めました。「多層的レジリエンス」の構築により、次の災害では被害が大幅に軽減されただけでなく、日常においても住民の生活の質が向上しました。
 
#08-2_洪水の対処にも多層的レジリエンスの構築で生活の質も向上

先進的な社会や組織の取り組みにより、人々はレジリエンスを危機対応の枠を超えた概念として理解するようになり、現在では変化や困難を成長の機会と捉え、常に学び、適応し、進化し続けることが当たり前になっています。また、脆弱性を隠したり、短期的な効率性だけを追求する組織やシステムは信頼されず、透明性を持ち、冗長性と多様性を備えた設計が尊重される文化が根付いています。
 
この進化の過程で学んだ最も重要な教訓は、真のレジリエンスとは単なる「元の状態への回復」ではなく、危機を通じて「より良い状態への変容」を遂げる能力だということです。そして、この変容は技術や制度だけでなく、私たち一人ひとりの意識と行動、そしてつながりの中から生まれるものなのです。
 
#08-3_挑戦と適応と変容の循環的なプロセスを歩もうnew

持続可能な社会への道のりは直線的な進歩の物語ではなく、挑戦と適応と変容の循環的なプロセスであることを私たちはようやく理解し始めました。

外部不経済を内部化し、循環経済を構築し、行動変容を促し、意味を追求し、厄介な問題に立ち向かい、トランジションをデザインし、地球と人間の健康を一体的に守る—これらすべての取り組みは、より大きな物語の一部だったのです。
 
 

 

考えるべき問い

私たちが直面している複合的な課題に対して、どのような統合的アプローチが可能でしょうか?
未来の子どもたちに、どんな強くしなやかな社会を残していきたいですか?

202X年、私たちは持続可能で公正な社会への旅路の途上にいます。
この旅に終わりはなく、常に変わり続ける世界の中で、学び、適応し、共に成長していくこのプロセスそのものが、私たちの目指す未来なのかもしれません。
 
そして、最も素晴らしいのは、この歩みが決して一人では成し遂げられないことです。
様々な考え方、知恵、思いを持つ人々が、垣根を越えてつながり、力を合わせるとき、本当の意味での強くしなやかな社会が生まれるのです。それは危機に耐えるだけでなく、危機を通じて花開く、人間と地球の新しいつながりの物語です。

さあ、この物語の次の章を、一緒に作っていきましょう。
 

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