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2025.08.07

Series|合成ユーザーを使ってビジネスの種を見つける5日間―DAY2: AI への質問を工夫したら、文化の深層まで見えてきた



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新連載「合成ユーザーを使って、ビジネスの種を見つける5日間」 2日目
 
今日は、山田さんが「質問の仕方」を見直すところから始まります。
昨日はシンプルな問いを投げかけたことで、ある程度の反応は得られたものの、どこか表面的な印象が残っていました。
 
 

 

昨日の反省から始まった工夫

「昨日の質問、もっと深く聞けたはず...」 火曜の朝、山田さんは昨日の反省を踏まえて質問テクニックを変更することにした。一問一答ではなく、相手の回答に対して段階的に深掘りしていく「ラダリング」手法だ。
今回のテーマである朝食ビジネス機会を探るために、山田さんは具体的な質問リストを作成することにした。

朝食の重要性を探る質問
「朝食はあなたにとって、どうしてそんなに重要なのですか?」 • 「朝食を大切にしよう(or簡単に済ませよう)と思われるのはどうしてですか?」・・・

具体的なシーンを掘り下げる質問
 • 「そのように思われるのは、具体的にどのようなときですか?」 • 「朝食を食べた後、どのような気持ちになりますか?」・・・
これらの質問を使って、表面的な回答の奥にある感情や価値観を探ってみることにした。
 
 

質問を工夫したことで見えた文化の深層

準備した質問リストを使って、いよいよ各国のペルソナとの対話を開始した。「朝食で大切にしていることは何ですか?」という基本的な質問から始めて、用意した深掘り質問を順番に投げかけてみた。
すると、予想以上に深い回答が返ってきた。

日本の合成ユーザーに「朝食はあなたにとって、どうしてそんなに重要なのですか?」と質問すると、「朝食で体を温めると、なんだか安心するんです。1日を乗り切れる気がして」という答えが返ってきた。

中国の合成ユーザーからは「効率的にエネルギーを補給できると、午前中から集中できて達成感があります」という回答が得られた。

ベトナムの合成ユーザーは「家族と温かいフォーを囲んでいると、心が穏やかになって...この時間があるから頑張れるんです」と語った。

さらに「そのように思われるのは、具体的にどのようなときですか?」と続けて質問すると、より具体的な状況や背景も明らかになってきた。

 
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 予想外の発見と新たな疑問の芽生え
これはもはや「朝食」の話を超えている、と山田さんは気づいた。 同じ「温かい朝食」への嗜好でも、用意した深掘り質問を使うことで、その背景にある感情と文化的価値観が国によって根本的に異なることが明らかになった。
日本は「バランス重視」、中国は「効率重視」、ベトナムは「伝統重視」。山田さんは画面を見つめながら、新しい発見の重要性を噛み締めていた。

しかし、リアルすぎる回答に逆に不安も感じた。
「このAI回答、本当に実際の人たちの感覚と合っているのだろうか?」
そこで明日は検証のため、AIではない生身の人間(社内の各国出身スタッフ)にも質問をぶつけてみることにした。
 
 

TIPS - ユーザーのゴールを階層で捉える、「ラダリング思考」

AIを使ったインタビューは便利ですが、問いが散漫になると、結局「何が知りたかったのか」がわからないまま終わってしまうこともあります。そんなときに役立つのが「ラダリング思考」です。
ラダリングとは、ユーザーの発言に対して「なぜそう思うのか?」と掘り上げる「ラダーアップ」で上位の価値観やゴールを探り、「具体的にはどんな場面や状況で、どのようなことをするのか?」と掘り下げる「ラダーダウン」で行動が現れる状況を明らかにする手法です。
このように、ユーザーのゴールをあらゆるレベルで捉えることで、やみくもな質問を避け、本質に近づくことができます。AIとの対話でも、この視点を持って問いを設計すれば、より深いインサイトにつながります。
DL資料では、ラダリングを使った問いの組み立て方をご自身で体験できるようなシートをご用意しております。ぜひお試しください。
 
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【連載】 Series|合成ユーザーを使ってビジネスの種を見つける5日間
 
 
 

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