2025.11.20
Series|小さく始めるカスタマージャーニーマネジメント 第2回 ― 部門の壁とスコアの罠、2つの壁をどう乗り越える?

CX(顧客体験)の改善はなぜ難しいのか?
原因は顧客体験の全体を見渡せず「点」として捉えていることにあります。
顧客体験を「線」で捉えるジャーニーマネジメントを小さく始めるプログラム「One Journey Sprint」
について全3回で解説し、成果につながるCX改善のヒントをお届けします。
「うちもCX改善に取り組みたいけど…どこから手をつけていいかわからない」
そんな声をよく耳にします。
その背景を探っていくと、多くの場合、2つの大きな壁にぶつかっていることに行き着くことが多いです。
ひとつの壁は、「部門をまたぐプロジェクトの進め方がわからない」「巻き込みがうまくいかない」という、組織の壁。
もうひとつの壁は、「NPSを導入したけれど、なかなかスコアが上がらない」という、成果指標の壁です。
今回は、この2つの壁を乗り越えるためのヒントをお伝えできればと思います。
そんな声をよく耳にします。
その背景を探っていくと、多くの場合、2つの大きな壁にぶつかっていることに行き着くことが多いです。
ひとつの壁は、「部門をまたぐプロジェクトの進め方がわからない」「巻き込みがうまくいかない」という、組織の壁。
もうひとつの壁は、「NPSを導入したけれど、なかなかスコアが上がらない」という、成果指標の壁です。
今回は、この2つの壁を乗り越えるためのヒントをお伝えできればと思います。
第一の壁:部門横断の難しさ― 「それぞれが自分たちはやっている」と言い張る
たとえば、店舗・EC・カスタマーサポート。それぞれが関わる顧客の購入体験を、どうやってひとつの流れとしてつなげるか。
これは、CX改善の中でも特に難易度の高い課題です。
ある企業では、「店舗とオンラインでの顧客の購入プロセスを改善しよう」とプロジェクトを立ち上げました。
背景にあったのは、顧客からのこんな声でした。
「Webで見た商品を店頭で探したが見つからなかった」
「店舗スタッフとECの説明が食い違っていた」
プロジェクトが始まり、店舗チームとECチームが一堂に会して議論を始めました。でも、なかなか話が噛み合いません。
「Webはちゃんと情報を出している」
「店舗側でも工夫してPOPを作っている」
「そもそも、そんなに困ってる人いるの?」
それぞれが「自分たちはやっている」と主張し、すれ違いが続きます。
こうした立場の違いによる認識のズレは、部門横断プロジェクトでよくある落とし穴です。
各部門には各部門の事情があり、それぞれが正しいと思って行動しているからこそ、視点を合わせるのが難しいのです。
顧客視点で、チームの視点をひとつにする
こんなときに有効なのが、短期間・高集中で進めるスプリント型の共創ワークショップです。
複数回のセッションで、実際の「顧客の声」や「購入シナリオ」をもとに、全員が同じ体験を見つめます。
複数回のセッションで、実際の「顧客の声」や「購入シナリオ」をもとに、全員が同じ体験を見つめます。
たとえば、「Webで商品の在庫があると表示されていたのに、実際には店舗に置いていなかった」という声を目にすると、店舗もECも、「これはお客さまにとって困ることだ」と自然と同じ視点に立つことができます。
部署ごとの言い分や事情ではなく、お客さまの体験を中心に話す。そうすることで、具体的な改善策が浮かび上がってくるのです。
「自分の担当範囲じゃないから、意見しづらい」
「部門が違うと、どこまで話していいか悩む」
そんな風に思ってしまうメンバーでも、「顧客のために」という共通のゴールがあることで、
前向きな対話が自然と生まれるようになります。
第二の壁:NPSが伸びない悩み― スコアを追うあまり、体験を見失っている
「NPSを導入してしばらく経つけれど、なかなかスコアが上がらない…」
これも、よく耳にする悩みです。
これも、よく耳にする悩みです。
スコアを見ては一喜一憂し、「何かやらなきゃ」と改善策を探すけれど、成果につながらない。
そんな状況に陥っている企業は少なくありません。
NPSが伸びない原因は、決して「努力が足りない」わけではありません。
NPSが伸びない原因は、決して「努力が足りない」わけではありません。
むしろ、スコアを上げようとするあまり、「なぜその点数になったのか」に向き合えていないことがよくあるのです。
本当に大切なのは、数字の奥にあるもの。
つまり、お客さまが体験のどこで喜び、どこで戸惑い、どこでがっかりしているかを丁寧に見ていくことです。
MoT ― 感情が動いた「決定的な瞬間」に目を向ける
そこで注目したいのが、MoT(Moment of Truth)です。
これは、顧客の印象や感情に大きな影響を与える瞬間のことを指します。


「顧客の「決定的な瞬間(MoT)」に注目:NPSや満足度を左右する体験に焦点」
たとえば、こんな瞬間がMoTになります。
「初めてログインしたときに、どこを見ればいいか迷った」
「問い合わせにすぐ返信が来て、安心した」
「納品された資料が期待以下で、がっかりした」
「初めてログインしたときに、どこを見ればいいか迷った」
「問い合わせにすぐ返信が来て、安心した」
「納品された資料が期待以下で、がっかりした」
こうした瞬間が、ポジティブにもネガティブにも、NPSや満足度を大きく左右しています。
全体のジャーニーを漠然と改善しようとするのではなく、感情が大きく動いた「決定的な瞬間」を特定して改善すること。
これが、スコアを押し上げる鍵なのです。
MoTに集中することで、限られたリソースを最も効果的なポイントに投下できます。
そして、そこでの体験が改善されれば、お客さまの印象は大きく変わります。
「この瞬間に、こんな気持ちになっていたのか」
「ここで期待を超える工夫ができれば、全体の印象が変わるはず」
そうした気づきが、自然と関係者の共感と実行力につながっていきます。
One Journey Sprintで、2つの壁を同時に乗り越える
One Journey Sprintは、4週間のセッションで、この2つの壁を同時に乗り越えるプログラムです。
まず、「どのジャーニーを改善するか」を明確にし、部門を越えたメンバーが集まります。
まず、「どのジャーニーを改善するか」を明確にし、部門を越えたメンバーが集まります。
リアルな顧客体験を起点に、購買までの流れを関係者全員で見渡します。
そして、そのジャーニーの中にあるMoTを見つけ出します。顧客の行動や感情を深く理解し、
インパクトの大きいタッチポイントに集中して改善していくのです。
顧客視点で集まることで、部門の壁は自然と低くなります。
顧客視点で集まることで、部門の壁は自然と低くなります。
MoTに集中することで、改善の方向性が明確になり、成果につながりやすくなります。
「部門横断が難しい」
「NPSが伸びない」
そんな悩みを抱えている方こそ、まずはひとつのジャーニーから始めてみませんか?
【連載】 Series|小さく始めるカスタマージャーニーマネジメント
カスタマージャーニーを活用したCX改善のヒントを、弊社CEO・白根による著書『いちばんやさしいCX経営の教科書 顧客体験を見直し"選ばれる会社"になる』 でさらに詳しく解説しています。
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Shuichi Jouriku
株式会社mct エクスペリエンスデザイナー/エスノグラファー
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