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2025.11.25

Series|医療×CX: Patient Centricityを“本気”で進めるために(全8回)― 第1回(2/6)

 
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Ⅱ. Patient Centricityが製薬企業・医療機関(病院)の
   双方で重視されている背景
 
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◆治すだけじゃない、寄り添う医療へ 
 
患者の声が、いま医療を動かす力になっている!
Patient Centricity、それは、すべての人にやさしい医療の新常識
 
 
◆医療の未来は「治す」だけでなく「寄り添う」ことにある:
 Patient Centricityがもたらす変革
 
医療の未来は、「治すこと」だけでなく「寄り添うこと」にあります。すべての患者の声に耳を傾け、ケアの提供にダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(DEI)の視点を取り入れることが、真に患者中心の医療体制を築く鍵となります。
 
近年、こうした考え方を体現する「Patient Centricity(患者中心主義)」が、製薬企業・医療機関(病院)の双方において急速に重視されるようになってきました。かつては医療提供者が主導する治療が一般的でしたが、今では「患者の視点に立った医療」が求められています。その背景には、以下のような要因があります。
 
 
1. 医療の質向上と治療アウトカムの重要性
医療のゴールは単に病気を治すことではなく、患者の生活の質(QOL)や治療体験を含めた「全人的なアウトカム」の実現へと広がっています。製薬企業では、新薬の開発において患者の日常生活への影響を重視し、医療機関では、患者満足度や個別化医療(パーソナライズドメディスン)の推進が進んでいます。これは「治す」から「支える」医療へのシフトといえます。
 
2. デジタル技術と情報の民主化
インターネットやモバイルアプリ、デジタルプラットフォームの普及により、患者は医療情報へのアクセスを自ら確保し、治療選択に主体的に関与するようになっています。これにより、医療機関や製薬企業は、透明性の高い情報提供やリアルタイムなフィードバック収集に取り組む必要があります。テクノロジーは「聴く医療」を可能にし、患者の声をケアの現場に直接反映させる手段となっています。
 
3. 規制の変化と政策による後押し
世界各国の規制機関もまた、Patient Centricityの視点を取り入れています。たとえば、患者報告アウトカム(PRO: Patient-Reported Outcome)の導入により、治験や医薬品評価に患者の声が正式に反映されるようになってきました。日本でも「患者・市民参画(PPI)」の取り組みが進展し、医療政策そのものに患者が関与する時代が到来しています。
 
Patient Centricityは、単なるスローガンではありません。それは、医療の本質を問い直し、「誰のための医療か?」という原点に立ち返るアプローチです。これからの医療は、患者と医療従事者がパートナーとして共に歩むもの。DEIの観点を取り入れながら、患者の誰ひとり取り残さない医療の実現が求められています。患者を真に優先する、より柔軟で包摂的かつ効果的な医療システムを構築することが極めて重要です。
 

 
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