2020.04.24
Blog|中国のリモートワーク最新トレンド
新型コロナウィルスの影響により、日本よりも一足先に、リモートワークが加速した中国。
これからの日本での働き方にとって何かヒントになることはないかと思い、クイックにリサーチを実施しました。
◆コロナウイルスの感染拡大前の中国のリモートワーク◆
リモートワークをしている労働者(以降:リモートワーカー)は、全労働者の1%に過ぎませんでした。各国と比較してみてもその水準は高いとは言えませんでした。
出所:Mob 研究院 2020疫情下的远程办公 行业洞察
◆コロナウイルスの感染拡大後の中国のリモートワーク◆
しかし、武漢でのコロナウイルスの感染拡大に伴って、多くの会社が春節休暇を2月まで延長。2月に入ってからは、リモートワークツールが完備されていき、家での仕事が可能になり、通常通り稼働し始めました。約200万人だったリモートワーカーの数が、2月以降、指数関数的に増加していきます。2月10日時点では、3,300万人となり累計でリモートワーカーは4億人を突破するまでになりました。
ほとんどの人が、これを機に初めてリモートワークを体験。そのため、今後の中国での働き方に対する考え方に大きな影響が出ることが予想されます。
出所:Mob 研究院 2020疫情下的远程办公 行业洞察
◆中国の巨大IT企業がリモートワークサービスへ参入◆
新型コロナウイルス発祥地である中国・武漢市ではロックダウン措置が取られました(4月8日解除)。そして、多数のIT企業がリモートワークのソフトウェアやプラットフォームの開発に注力しました。
下記の図は感染拡大の間、巨大IT企業が無料で提供したサービスの一覧です。中国の急速なリモートワーク拡大の背景に、IT企業が率先してこのような支援活動を展開したということが関係していそうです。このような時でもブランド力を高め、社会貢献という「意味」を高める活動に素早く着手するという姿勢には、日本企業も見習うべきところがあると思います。
◆中国のリモートワーカーの実態◆
上記のリモートワークサービスを用いて、リモートワーカーはどのような働き方をしているのでしょうか?SNSリサーチと弊社の簡易インタビューでの実際の声を聞いてみましょう。
アリババ社員
“働き方は、結構規定されたもので、毎朝午前9時に朝礼がビデオ会議で行われています。”
“月に1回、部署間で、作業タスクを共有する「大集会」を開催しています。朝9時に始まり、夜11時に終わる大規模なものです。”
“母親が珍しがって、私のオンライン会議の様子を見に来たりしました(笑)。家族にとっても、私の仕事を知ってもらう良い機会になったと思います。”
朝礼の様子
引用元:https://www.bilibili.com/video/BV1s7411E7a2/
アリババでは、メッセンジャーアプリを通じて、毎日従業員に健康状態(COVID-19関連)を提出するように求めています。
このレポートサービスは他の企業でも使用されており、毎日約1億人が自分の健康状態を報告していました。
Alibabaの DingTalk アプリ
テンセント社員
“通勤時間も掛からず効率的に時間を使え、柔軟に働けたり、両親と過ごせる時間が増えたりするので、リモートワークは好きですね。
“社会的な活動ができず同じような毎日を送って、気持ちが晴れない。そんな時チームにとって重要なのは、カジュアルな会話を交わすこと。それは、チームを結びつけるだけでなく、社会的な繋がりを感じさせるものになると思います。”
美団社員
“私たちのチームは、毎朝9:30にミーティングをし、その日のTo Doリストを作成。その日の終わりに進捗を報告することにしています。”
“コロナ以前は9時から21時までオフィスで働いていましたが、現在は状況が悪化しています。チャットグループでは昼夜問わず絶え間なく仕事に関連するディスカッションが行われています。”
“私はオフィスに戻りたいと思っています。より効率的に仕事ができるだけでなく、対面でカジュアルな会話をしたり、少し歩いたりすることもできるからです。”
シャオミ社員
“まず問題になったのはコミュニケーション。気軽に誰かのところへ行って話すことはできません。 簡単なことでさえ、テキストだけで説明するのは難しいと感じました。”
“自己規律も新たな問題として浮上しました。家とオフィスではそもそもの目的が異なっています。突然家で仕事をすることになるので、仕事前後には気持ちの切り替えが必要になってきます。”
◆中国のリモートワーカーの実情から見えてきたもの◆
主に中国のIT企業で働く社員のコメントからいくつかの発見がありました。
1. デイリーなミーティングとレポートによるマネジメント
チームの生産性を高めるマネジメント上の工夫が行われていました。例えば、毎日定時にミーティングをしてタスクを共有したり、終業時には進捗を報告したりするといったルールが作られていったようです。ある程度規律あるルールが存在することで気持ちのメリハリがつきそうですね。ちなみに現在中国では、「タワー」とアリババが所有する「チームビション」がタスク管理サービスの2強のようです。
2. カジュアルな会話が創造性の源泉
リモートワークだと、ちょっとした内容でも、意図したことが伝わらないことがあります。またプライベートな会話が減ることで、チームの絆や社会的なつながりも希薄になりがちに。
実はこれまで「無駄話」と呼んでいたインフォーマルな会話によって、本当に伝えたい意図が効果的に伝達できたり、心理的な安全性を回復したり、さらにはアイデアの種や問題解決のヒントが見出されたりということがあるようです。
3.「儀式」を取り入れよう!
自宅を「仕事をする場所」だと心理的に理解できず、”気持ちの切り替えがうまくできない”という問題が発生しています。中国の有名なSNS微博では、多くの人が在宅勤務時の「儀式」の重要性について言及。こうした「儀式」の感覚は、仕事とプライベート間の「区切り」として機能します。例えば、「5分間の瞑想」、「フォーマルな服装」、「オフィスに行くふりをする少しの散歩」が有効だと言われています。皆さんも自分に合った「儀式」を見つけてみてはいかがでしょうか。
以上、中国のリモートワークの実情について調べてみました。各国のリモートワーク事情について、さらに分析を深めると、それぞれの国の慣習や文化、企業風土といったコンテクストの影響を受けて、国独自の生活者の価値観が浮き彫りになってくるでしょう。
mctでは、引き続き海外のオンラインでリモートエスノグラフィを実施しています。特に中国では、デジタル環境が整っており、クイックにインタビューしやすい環境になっていることが想定されます。変貌していく世界の生活者の価値観についてコンテクストの理解を深めながら、機会探索のサポートをいたします。
また、合わせてリモート下におけるEX(Employee Experience:従業員経験)向上のサポートのご相談もお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。
次回のブログでは、「リモートワーク下においてチームワーク文化を育むために何が必要なのか」についてお届けする予定です。どうぞお楽しみに!
記事原文:趙 展 日本語編集:飛岡 憲
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Zhan Zhao
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