2020.05.15
Blog|Insights in Design and Business During COVID-19
今回は、先日ご紹介したDesignX CommunityによるイベントRemote Design Weekから「Insights in Design and Business During COVID-19」(コロナ禍におけるビジネスとデザインのインサイト)についてご紹介します。
本セッションは、Webサイトやスマホアプリのためのプロトタイピングツールや、オンラインで使用できるホワイトボードツール等の開発を手がけている『InVision』のディレクター/CXデザイナーであるアダム・フライピアースがメインスピーカーとなり、zoomの画面共有とYouTubeのLive配信機能を用いて行われました。
InVisionでは創業当初からフルリモートを推進しており、いわばリモートワークのエキスパートともいえる企業です。
InVisionは、AppleやGoogleといった世界の名だたる企業のトップデザイナー達が参画している『Design Leadership Forum』(以下DLF)も企画しており、本セッションではそのDLF内のトップデザイナー達とのディスカッションで得られたコロナ禍におけるデザインとビジネス、特にデザインチームのための10のインサイトを以下のように紹介しています。
1.The digital transformation has accelerated
デジタルトランスフォーメーションが加速した
多くのビジネスリーダーたちは、デザインの価値やデジタルチャネルを最適化することの重要性を数年前まで理解していませんでした。しかし、Covid-19によるパンデミックが起きた今こそ「デジタル」というのは顧客と繋がるベストチャネルだとアダム・フライピアースは述べています。
今まで顧客と繋がる場合、顧客が実際に足を運んでいる場所、リアルの店先に足を運ばなければなりませんでしたが、今はデジタルの発展によって画面越しに顧客と接点を持つことができます。さらに、B2Cのブランドをみたとき、小売店やレストラン、エンターテイメントといった業界のビジネスリーダーたちは、次々とデザインチームを作って、デジタルカスタマーエクスペリエンスを最適化し、イノベーションを素早く起こしています。これはつまり、対面型/対人型のカスタマーエクスペリエンスを誇るB2Cブランドは、デジタルへの転換を余儀なくされているということになります。
2.Teams are designing for the "social distance economy"
チームは「ソーシャルディスタンスエコノミー」に備えてデザインをしなければならない
Covid-19のワクチンが完成し一般的に普及されるまで、以前のような生活に戻ることは難しく、現在のようなライフスタイルがしばらく続くでしょう。こうしたコロナ禍で事業を繁栄させるためには、ソーシャルディスタンス(社会的距離)が敷かれた世界で如何に顧客経験を向上させるかを考える必要があります。
DLFでは、レストランや劇場、スポーツ用品店などに対して、「ソーシャルディスタンスエコノミーの下、どのようにして顧客経験をデザインしていきますか?」というヒアリングを行ったそうです。その結果、彼らは対面式の顧客経験を再考し、デジタルとの融合を通して顧客経験を向上させるといった非常にクリエイティブな方法を思いつき、実践しようとしていました。例えば、リアルとネットの境界を融解し、あらゆるメディアで顧客との接点を作るオムニチャネル戦略は非常に効果的だとしています。
こうした戦略を取った時、発見した顧客の課題とビジネス機会を結びつけ、顧客に対して新しいソリューションを提供することができるデザイナーは、重要なポジションを担っているとアダム・フライピアースは述べています。
3. As team investments increase, so do systems
チームへの投資が増えると、よりシステマティックになる
既述のようにCovid-19のパンデミックによってこれまで以上にデザインの重要性やニーズが増してきています。
より多くのデザインニーズに対応するため、デザインチームにはより多くのお金とリソースが投資されます。これにより、デザインの運用効率を考えて全社的にデザインシステムを導入する流れがやってくるとDLFは推測しています。結果的に社内のデジタルトランスフォーメーションも加速し、より実践的になっていくでしょう。
4. Businesses are transforming, fast. They might be burning out their employees
ビジネスは素早く変化しており、従業員をバーニングアウト(焼き尽くす)してしまう恐れがある
新型コロナウイルスの影響でリモートワークが中心になり、その中でより効率的なワークフローを追求していますが、それがチームとチームリーダーに取って大きなストレスになっています。しかしながら、デザイナーはこのビジネスの転換を支える重要なポジションを担っています。
例えば、数時間に及ぶ非生産的なミーティングを、超効率的な30分のホワイトボードセッションに変え、そこでアイデアの取捨選択を行うことで、今まで時間を取られていた開発と意思決定のサイクルを早めることができます。
5.Covid-19 has created a climate of empathy and caring
Covid-19は共感と思いやりの風土を作り出した
パンデミックを通して、仕事の雰囲気や会社の風土がより人間的になってきたとアダム・フライピアースは主張します。
例えば、遠隔ミーティングの冒頭では、いきなりアジェンダに入るのではなく、「調子はどうですか?」「体調にお変りないですか?」といった挨拶から入ったりしますよね。
また、画面越しから子供の声が聞こえたり、飼っているペットが映り込むなど、上司やチームメンバーの内面的な部分もリモートワークを通して垣間見ることができます。
このように従業員の間で、共感と思いやりの風土が出来つつあります。自分を含め、チームメンバーをある1つの部族のように捉え、チームカルチャーを向上させることが大事だとしています。
6.The screen has democratized the team
スクリーン(PCの画面やモニター)がチームを民主的なものにした
リモートワークのツールとしてzoomを使用していようがwebexを使用していようが、画面の向こうに映るチームメンバー(自分自身も含む)は大体同じサイズ・形をしていますよね。その人の特徴、たとえば、衣服、身長、性格、大きめな声でさえ聞き手側で調整できてしまうので、誰も気にしません。画面越しのメンバーが、どんな部屋でどんな椅子に座って会議に臨んでいるのかといった物理的空間も気に止めることはありません。
このように制約的な画面を通してチームメンバーとコミュニケーションする機会が増えたことで、チームがよりフラットな雰囲気へと変化しつつあります。
7.Leaders are confident their teams will be stronger on the other side of the pandemic
デザインリーダーたちは自分たちのチームが、パンデミックを通してより強くなると確信している
長い外出自粛期間のなかで、既にリモートワークに適応し始めている方も多いのではないでしょうか。こうしたリモートでの作業が増えるにつれ、チームメンバー間でより強力なコミュニケーションが実践され、新しいコラボレーションのスタイルが生まれるだろうとDLFのメンバーは予測しています。
例えば、従来はデザインスタジオなどで行なっていた付箋を使ったワークショップも、今後は『miro』や『Freehand』といったホワイトボードツールを用いて、デザイナー以外の人とコラボレーションすることができます。
アフターコロナの環境では、こうしたホワイトボードセッションでイノベーションが生まれようとしています。
8.Teams might stay distributed, as there are many benefits
リモートワークは多くのメリットがあるため、チームは分散したままになる
上述のように新しいコラボレーション/コミュニケーションの方法が確立され、リモートワークのメリットが露わになると、従来のようにオフィスへと出社してチームで集まる機会は減っていくでしょう。そうなるともはや、リモートワークが一般的となり当たり前の日常になります。
9.Teams are cutting travel, but that might not be temporary
一時的ではなく今後も仕事のための移動は減り続けるだろう
世界のデザインリーダーたちは、既に多くの業務をリモートで行なっています。ミーティングに限らず、まさにRemote Design Weekのようなコミュニティイベントも完全リモートで開催できるようになりました。また、採用や営業といった、従来は対面でしか行うことのできなかった企業活動も徐々にリモートへとシフトしようとしています。リモート環境に慣れたデザイナーはこの状況をチャンスと捉え、企業のそうした活動を支援していくことが大事だとDLFのメンバーは主張しています。
10.Designers need to know how to communicate their business value
デザイナーは如何に自分たちのビジネス価値を伝えていくかを考えなければならない
インサイト1で既述のように、ビジネスリーダーはコロナ禍を生き抜くため、大きなイノベーションを起こすアイデアを模索しており、デザインの力を取り入れようとしています。
そんな中、自分たちのビジネス価値を適切に伝えることが、デザイナーにとって重要になってくるとDLFのメンバーは主張しています。デジタルチャネルでユーザーの声を聞き、如何にして課題を解決するかという部分にデザイナーは貢献していかなければなりません。
コロナ禍では、時代にそぐわないビジネスも増え、経済がより混沌としてきているため、デザイナーはデザインの価値を伝えることがより重要になりました。
最後にアダム・フライピアースは次のような言葉でセッションを締めくくっています。
Covid-19によるパンデミックは、私たちの生活や働き方を大きく変えました。そしてそれらは、アフターコロナの世界でも脈々と変化し続けるでしょう。そうした生活、労働、産業の変化をいち早く捉え、事業をリードしていくことがこれからのデザイナー、デザインリーダーには求められるでしょう。
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Keisuke Minowa
株式会社mct エクスペリエンスデザイナー
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