Insight Blog

2026.07.07

【気候変動適応】気候変動を捉え「最高の顧客体験(CX)」へ変換するデザインアプローチ



cremate_1
 
 
気候変動と聞いて、私たちが真っ先に思い浮かべるのは「猛暑」です。
しかし、気温が数度上がるという事実は、氷山の一角に過ぎません。私たちが直面しているのは、
単なる気温の上昇ではなく、「日本の産業・生活基盤そのものの地殻変動」です。「暑さ」という言葉だけでは片付けられない、複雑に絡み合ったリスクと、それ以上に巨大なビジネスの商機が浮かび上がってきます。

「うちは製造業だから、熱中症対策をすれば大丈夫」「アパレルだから、冷感素材を増やせばいい」。そんな現状維持の思考を変えていかなければなりません。本記事では、A-PLATの知見をお借りながら、私たちが陥りがちな考え方を打破し、気候変動を多角的に捉えていくための視点を提示します。
 
  

 
 
目次
1.「暑さ」に隠れている気候変動の裏側
2. 気候変動データで読み解く:あなたの事業を脅かす「見えない変化」
3. 「災害・生命リスク」の先にある未開拓のビジネス機会
4. 科学的知見を「ビジネス機会」に変換する
この記事のポイント
 

 

1.「暑さ」に隠れている気候変動の裏側

 
 「平均気温が4度上がる」という言葉は、私たちの想像力を制限してしまいます。しかし、A-PLATが公開している分野別の影響予測を見ると、事態はより多層的であることがわかります。
スライド56
出典:気候変動適応についてのスライド集(国立環境研究所)


例えば、農業。単に「作物が枯れる」だけでなく、害虫の越冬や分布拡大、開花時期のズレ、品質の低下など、サプライチェーン全体の根幹を揺るがす変化が予測されています。また、水資源においても、総降水量が変わらなくても「降るときは豪雨、降らないときは深刻な干害」という極端な二極化が進みます。

これらは、もはや「暑さ対策」という次元の話ではありません。これまでのビジネスモデルが前提としてきた「日本の安定した自然環境」というインフラそのものが消失することを意味しています。
 
 

2. 気候変動データで読み解く:あなたの事業を脅かす「見えない変化」

 
A-PLATが提供する「気候変動の影響への適応に向けた将来展望」などを活用すると、より具体的なリスクが見えてきます。これらは特定の業界だけでなく、全産業に影響を及ぼす「見えない環境変化」です。

スライド69
出典:気候変動適応についてのスライド集(国立環境研究所)

「短時間強雨」による物流・インフラの麻痺
気温上昇は空気中の水蒸気量を増やし、局地的な豪雨を激甚化させます。これは単なる浸水被害に留まらず、ジャストインタイムの物流網を寸断し、企業の在庫戦略や拠点配置の抜本的な見直しを迫ります。

「生態系のシフト」による市場の変化
海水の温度上昇により、獲れる魚の種類が劇的に変わります。食文化の変化は、外食産業や小売業の棚割りを根底から変えるはずですが、多くの企業はまだ「去年の実績」に基づいて計画を立てています。

「労働生産性」の地理的・時間的変化
屋外作業だけでなく、物流倉庫や製造現場の熱負荷は、作業効率を著しく低下させます。A-PLATの暑さ指数(WBGT)予測は、単なる安全管理の指標ではなく、「どの地域で、どの時間帯に操業するのが最も効率的か」という投資判断の指標へと変質しています。
 
 

3. 「災害・生命リスク」の先にある未開拓のビジネス機会

 
ここで重要な視点があります。現在、気候変動を研究している機関が発信している情報の多くは「気候変動による生命危機の対策(レジリエンス)」や「経済的損失を最小化するためのリスク管理」に寄っています。行政や公的機関としては当然の優先順位ですが、ビジネスの現場ではその「さらに先」を見る必要があります。

先行企業はすでにこれを「市場の再定義」として捉えています。気候変動のデータを活用し「未来の困りごと」を先読みすることができれば、新しいビジネス機会の開拓につながります。

人々が「命を守る」というフェーズを超え、「この過酷な環境下で、いかに人間らしく、豊かに、楽しく暮らすか」というニーズにシフトしたとき、そこには広大な市場が広がっています。

「避難」から「居住の再定義」へ
災害リスクを避けるための移住や、シェルターとしての住宅ニーズはすでに顕在化していますが、今後は「過酷な外気から隔離されながらも、自然を感じ、精神的な豊かさを享受できる空間設計」といった、より高度なQOL(生活の質)への適応が求められます。

「我慢」から「新しい娯楽」へ
日中の屋外レジャーが困難になる未来において、VRやメタバースを活用した新しい余暇のあり方や、完全空調化された広大な屋内エンターテインメント、あるいは「夜型社会」へのライフスタイル移行に伴う夜間経済(ナイトタイムエコノミー)の爆発的な拡大が予想されます。

「備蓄」から「自律型ライフスタイル」への転換
「いつか来る災害」のために不便を強いて備える「防災」の考え方を経て、今後は極端な気象が日常となることを前提に、オフグリッド技術や資源循環システムを日常のデザインに組み込んだ「自律型ライフスタイル」が考えられます。モビリティや家電が、非常時のツールではなく、日常をより自由でクリエイティブなものにするかもしれません。

カレンダーの崩壊と、感性的な「新・旬」の創造
四季や月ごとの行事といった、既存のカレンダーに基づくマーケティングは、実態との乖離により機能不全に陥ります。しかし、それは「季節感の消失」ではなく、気候データと人々の体感温度に連動した「動的な旬」を再定義する機会です。データに基づき、植物の開花や気温の変化にリアルタイムで適応する商品展開や体験設計を行うことで、顧客が変化の激しい世界の中でも「時間の豊かさ」を感じられる、新しい文化価値を創出できます。
 
 

4. 科学的知見を「ビジネス機会」に変換する

 
気候変動を、デザインでチャンスに変える
 
将来の気候変動を示すデータはいわば「未来の地図」です。しかし、地図を持っているだけでは目的地には辿り着けません。そのデータを解釈し、自社の強みと掛け合わせ、具体的な製品や体験へと昇華させる「デザイン」のプロセスが不可欠です。

気候変動を「暑さ」という単一の視点や、「災害」という守りの視点だけで見るのをやめましょう。気候変動による影響を多面的に捉えて「攻めの材料」として活用してください。

私たちmctは、APLATを運営している国立環境研究所 気候変動適応センターと連携し、予測データと人間中心のデザイン思考を融合させ、新しい価値を創造するお手伝いをしています。

変化を恐れるのではなく、変化を前提とした新しいビジネスのスタンダードを、共にデザインしていきませんか。
 
  

この記事のポイント

 
・「暑さ」は気候変動の側面の一つに過ぎない
・公的データの「生命・災害リスク」の先を想像する
・気候変動による変化を「ビジネスの種」に変える
 
 
 

mctの気候変動適応デザインアプローチ

 
適応しようバナー
 
株式会社mctは、気候変動適応を商品・サービス開発の機会へと転換する新しいデザインアプローチ気候変動時代の商品開発を導く未来洞察を提供しています。
本サービスは、国立環境研究所 気候変動適応センターが推進する「#適応しよう」キャンペーンにて、「気候変動適応に関するビジネス機会‧研究開発テーマの創出支援」を行う企業として、気候変動適応賛同パートナーに登録されています。
気候変動がもたらす不確実性を新たな市場機会のチャンスと捉え、未来の顧客が本当に求める商品開発の第一歩として、是非このアプローチをご検討ください。
 dfca_bn
 

【関連記事】

  • 【気候変動適応】なぜ気候変動をビジネス機会ではなく「環境問題」と捉えてしまうのか?サムネイル画像
  • 【気候変動適応】気候変動の「100年予測」をビジネスチャンスに変えるサムネイル画像
  • Series|近未来小説:気候の変化を乗りこなす生活者たち—#05(健康が社会的な指標となった時代)最終回サムネイル画像