2026.09.29
40℃が日常になったら、あなたのビジネスはどう変わるか。気候変動への適応を学ぶ体験ワークショップ「40℃エコノミー」イベントレポート

気候変動はもう「いつか来るリスク」ではなく、すでに起きている変化。
異常が日常になる。気候変動によって、私たちの生活も静かにゆっくりと変化しています。すでに避けられなくなってしまった変化に、私たちはどう向き合い、どう暮らしを組み立て直していくのか。その先に、企業が果たせる役割があるのではないか。mctでは、最新の科学的知見と未来デザインによってビジネスの「新たな機会」を探索する活動をしています。
その活動を広めるために、8月初旬、真夏日の熱中症警戒アラートが出ているその日に、国立環境研究所気候変動適応センターの方々とともに、気候変動への適応を学ぶアイデアワークショップ「40℃エコノミー」を開催しました。
前半は気候変動適応の基礎講義と、後半は未来洞察を用いたワークショップで構成。
本記事では、先日行われたイベント当日の様子を、当日使用されたツールやプロセス、サンプルを交えてレポートします。
第一部:LECTURE | 気候変動適応の基礎と最新情報
気候変動の現状と「適応」の必要性
前半は、国立環境研究所の砂川淳氏による講演「なぜ温暖化がビジネス機会につながるのか」という、少し挑戦的な問いでした。
温暖化と聞いてまず思い浮かぶのは「気温の上昇」でしょう。しかし話はそれだけでは終わりません。湿度の変化、蚊などの媒介動物の生息域の拡大。私たちの生活を静かに侵食していく変化は、想像以上に多層的です。そして、十分な対策が取られなければ、今世紀末には気温が最大4.8度も上昇するというシナリオも共有されました。
こうした背景から、排出そのものを削減する「緩和(Mitigation)」に加え、すでに避けられない未来の被害に備える「適応(Adaptation)」の両輪の取り組みの重要性が強調されました。この日は、まだ十分に語られてこなかった「適応」の側面に、光を当ててみようという趣旨でした。

リスク管理から「適応ビジネス」への挑戦
これまで企業にとっての気候変動対応は、気候変動に関連した情報開示や現場の安全確保といった、いわば「守り」の施策が中心でした。それはこれからも変わらず必要なことです。
砂川氏はそこにもう一段の視点を加えます。「気候変動によって生活者が実際に困りごとを抱えるなら、それに応えることも、企業の役割のひとつになっていく」。変化から目を逸らさず、そこで困っている人に向けて、何ができるかを考えることが、「適応ビジネス」という考え方です。
その実例として紹介されたのが、デング熱を媒介する蚊から肌を守る「モスブロックセラム」(花王)や、建物内の暑さを防ぐ「IS遮熱シート」(石蔵商店)。どちらも、暑さや感染症リスクに実際に困っている人たちの困りごとに、正面から向き合って生まれた商品です。
変わりゆく世界の中で、誰が何に困るのかを誰よりも早く見つけ、その解決に手を貸す。それが結果として、企業の新しい役割にもなっていく視点が共有されました。
適応センターが推奨する「適応アクション」を国民一人ひとりに広げていく、「#適応しよう」キャンペーン
第二部:WORKSHOP | 気候変動の未来を発想する
なぜ気候変動適応に、フューチャーデザイン(未来洞察)なのか?
後半は、mctによる「フューチャーデザイン(Futures Design)」の手法を用いたワークショップを実施しました。
私たちがアイデアを考えるとき、無意識のうちに「今の常識」を前提にしてしまいます。しかし、暑さや災害が当たり前になった未来では、生活者の価値観そのものが今とはまったく違うものになっているはずです。
フューチャーデザインは、「今の延長線上の未来予測」から一歩踏み出し、あえて「今とは違う未来の世界」に立ってみるアプローチ。その世界に生きる人々が、どんな悩みを抱え、何を欲しているのかを想像力で探っていきます。
【ステップ①】世界観の種を選ぶ(シグナルピックアップ)
まず使ったのは「シグナルカード」。世界中から集めた、未来の変化を予感させる小さな兆し——それを私たちは「シグナル」と呼んでいます。今回は10枚ほどのカードを用意しました。
例えば、こんなシグナルです。
ワークで使用されたシグナル例:サンライズ・エコノミー(早朝経済)の広がり:活動制限のある日中を避け、早朝5時にランニングイベントを展開するブランドや、出社前に早朝の公園に集まり音楽に合わせてコーヒーを飲む若者のトレンドなど。
なぜ、こんな小さな兆しに注目するのでしょうか。科学的なデータがそろって「変化が起きている」と証明される前に、人の行動のほうが先に変わり始めることがあるからです。まだ誰も名前をつけていない、弱い兆しをどれだけ早く、たくさん観察できるかが、次の一手を考えるヒントになります。
そのため、参加者には「実現しそうか」だけではなく「自分になかった視点だ」「なんだか面白い」という直感を重視して、シグナルを選定してもらいました。
【ステップ②】世界への影響の連鎖を描く(フューチャーホイール)
選んだ「シグナル」がもし社会にすっかり根づいたとしたら、私たちの暮らしにはどんな変化が広がっていくのか。それを一枚の図に視覚的に書き出していきます。
中心にシグナルを置き、その周りに「直接的な影響」、さらに外側に「間接的な影響」を波紋のように広げていきます。これが「フューチャーホイール」という思考ツールです。
そして、描き出したアイデアの数々を「フューチャー・コーン」という枠組みで評価します。「起こりそうな未来(Probable)」「もっともらしい未来(Plausible)」「起こり得る未来(Possible)」「私たちが望む好ましい未来(Preferable)」——この4つの視点で見直すことで、常識に縛られない発想かどうかを確かめていきます。特に注目したのは、まだ誰も気づいていない「Possible」と、私たちが本当に望む「Preferable」の領域です。
Future Wheelを使って、シグナルからアイデアを発散させる。
【ステップ③】未来ターゲットに向けたアイデア発想
次に、mctがあらかじめ用意した「世界観サンプル」をお配りしました。
本来はこのフューチャーホイールの続きとして、参加者自身が「気候変動が進んだ未来の世界観」を言語化していくプロセスですが、今回のワークショップでは時間の都合上、あらかじめ用意された世界観をピックアップし、メンバー間で共通認識として共有するところからスタートしました。
例えば、こんな世界観です。
酷暑によって屋外活動そのものが生命の危険を伴うようになり、子どもたちの生活・教育・コミュニティの場が完全に屋内へ移行し、屋内に新しい地域社会が再構築された社会。
この具体化された未来世界を土台に、「どんなターゲットが、何を求めて生きているのか」を参加者同士で議論していきます。乳幼児、高齢者、営業マン、工事作業員など、特定の誰かを思い浮かべながら、その人がまだ言葉にできていない悩みに向き合い、製品やサービスのアイデアを創出していく時間です。
現状の常識から離れ、未来の潜在ニーズを満たす、革新的な事業案が次々と飛び交いました。

イベントを終えて
最後は、ケータリングを囲みながらの懇親会。
暑い1日の熱気がそのまま、あたたかい空気に変わって、「40℃エコノミー」の幕を閉じました。
参加者からは、こんなコメントが届いています。
" 今の現状や取り組みを知れたことで、今までリサーチしていた項目に今後は気候変動も入れたいと思います。そこまで、見据えないと、商品戦略が薄いものになると思いました。" " すでに40℃を超える気温も現れているますが、これが日常化するなどした未来を今までよりも具体的にイメージすることができました。" "シグナルを選んでから影響を考え、ターゲットがあると、アイデア発想が広がりやすかったです。" |
うれしい反響をいただき、次回のイベントもすでに動き出しています。
今回は夏に合わせて「40℃」のキーワードを選びましたが、次はどの季節のどんなキーワードが主役になるのか・・・お楽しみに。
mctが提供する、企業のため「適応ビジネス」創出プログラム
今回のワークショップで体験いただいたプロセスをベースに、mctでは企業の適応ビジネス創出を支援するプログラムをご用意しています。
● シグナル探索:未来のライフスタイル変化を示唆する世界の最先端事例を収集・分析します。
● エキスパートインタビュー:最前線の研究者へのインタビューから、最先端の気候洞察を収集します。
● エクストリームユーザー調査:すでに過酷な環境で暮らす人々を対象とした行動観察から、未来の生活者の潜在ニーズを先取りします。
● フューチャーデザインワークショップ:複数の未来シナリオを描写し、貴社の新規事業・商品開発アイデア創出をリードします。
気候変動を成長機会に変えるアプローチや支援プログラムの詳細は、下記リンクよりご確認いただけます。
▶ 気候変動適応(Climate Adaptation)イノベーション支援メニューはこちら
▶ 40℃セミナーイベントレポートのダウンロードはこちら
▶次回のイベント開催情報をいち早くお知らせします。
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Sonoka Imagawa
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