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7 06, 2017 01:48 メタファーとコンテクスト

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こんにちは、mct デザインインサイトユニットの景山です。
 
先週の増田の投稿に続き、「メタファー」について。
皆さんは、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』という映画をご存知でしょうか。2014年に公開、今年2017年5月に続編の『リミックス』が封切られ、地域によってはまだギリギリ上映中だったりするので、ご存知の方も観たという方も多いでしょう。その映画の中に、ドラックスというキャラクターが登場します。彼は、家族を悪者に殺された、悲しい過去を持っているのですが、同時に「メタファーが通じない」人物として、コミカルにも描かれています。
例えばこんな場面。作品の主人公・ピーターが、喉に指を当て真横に動かすジェスチャーをして
 
(殺されるぞ)
 
とドラックスに伝えたのに対し、ドラックスは
 
「なぜ喉に指を当てる?」
 
と不思議そうに返します。
 
彼の表情から、自分がやったことの意味が理解されていないと察したピーターは、「いいか、喉に指を当てるっていうのはつまり…」と、いちいち言葉で説明する羽目になります。
 
ドラックスは別の場面でも、彼のことを皮肉って「歩く類語辞典(walking thesaurus)」と呼んだピーターに、「そんなふうに呼ぶな(Do not ever call me a thesaurus)」とキレかけて「メタファーだよ」とまた説明させたり、「こいつにはメタファーは耳を素通り(Metaphors go over his head)」という別の人物のセリフにも「素通りしない。素早い反射神経でキャッチする(Nothing goes over my head. My reflexes are too fast. I would catch it)」と答えたり、といった具合に、言っていることを字義通りにしか受け止めず、会話がまったくスムーズにいきません。
 
作中では、こうしたやり取りはギャグとして描かれており、「喩えが通じない」というドラックスの特徴も、彼のチャーミングな一面、という風に演出されています。しかし現実ではメタファーの使い方を失敗すると、会話がずれてしまうだけでなく、誤解や下手をするとコミュニケーションの断絶を生んでしまいます。あなたにも、喩えが相手にうまく通じなくて困ったり、会話がぎくしゃくしてしまった経験はありませんか?
 
「メタファー」をコミュニケーションで使う際には、当たり前ですが「そのメタファーを、相手が理解できる」ことが大切です。上の例では、「喉に指を当てる」という動作が「人を殺す」ということを暗に意味する、という前提が、話し手と受け手との間で共有されているかが問題となるわけです。ピーターとドラックスの間にはこの前提が共有されていなかったため、紹介したようなズレたコミュニケーションが起きてしまったのです。
 
逆に両者の間で前提や文脈(コンテクスト)を共有し、適切な「メタファー」を見つけてそれをうまく使うことができれば、相手との間に強い関係を築くことができます。
例えばタイヤメーカーのミシュランは、顧客へのインタビューを通じて、彼らがタイヤを「防護服」「セーフティネット」など、自分を守ってくれる「容れ物(Container)」に喩えていることに気づき、タイヤを「ノアの方舟」に見立てたCMを作りました。タイヤの安全性能を、ノアの方舟(=大洪水から中の動物を守ったと旧約聖書で語られる、安全の象徴)の「メタファー」で表現し、顧客の無意識に訴えたわけです。
 
 
「ZMET法」のインタビューでは、顧客から「メタファー」を引き出し、分析を通じて、顧客がそのメタファーを用いるコンテクストを理解します。そこから顧客にとって「適切なメタファー」を発見し、コミュニケーションに応用していくのです。ピーターが最初ドラックスに対してやったような、「このメタファーは当然相手も理解するだろう」という暗黙の前提に陥らず、その前提やメタファーが用いられるコンテクストに意識的になることで、顧客に届くメッセージを届けることが可能になります。
 
ちなみに冒頭で挙げたドラックス、新作の『リミックス』では、何と自分で「メタファー」を使えるようになっています。しかしその内容は何とも・・・な下ネタなので、ここでは説明しません。気になった方はぜひ映画をご覧になってください。
 

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mctでは、ユーザーの無意識から「メタファー」を表出させる世界的メソッドZMET(Zaltman Metaphor Elicitation Technique)のライセンスを、日本企業で唯一保有しています。

ZMETメニューに関心がある方は、ぜひお問い合わせください。

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Satoshi Kageyama株式会社mct エクスペリエンスデザイナー

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