2026.04.07
Blog|どこかで見た気がしない!? AI推進のいま──組織を引き戻す「輪ゴムの力」

多くの企業における昨今のAI推進の動き、どこかで見たような既視感がありませんか?
そうです。コロナ禍でのリモートワークの広がりととてもよく似ています。
AI推進の動きに感じる「既視感」
このところ右を向いても左を向いてもAIの話題です。多くの企業において、AIツールを導入し、研修をして、まずは使ってみようと活用を促しています。実際にうまくAIを使いこなしている人も少しずつ増えてきました。
・・・でもこの感じ、どこかで見たことがある気がしませんか。
そうです。コロナ禍のリモートワークが一気に広がったころの、あの状況です。
コロナ禍でリモートワークが急速に普及し、「働き方は大きく変わる」「もう元には戻らない」と言われていました。実際、多くの企業が短期間で大きく変わりました。(今はもう懐かしさすら感じますが、「ニューノーマル」「アフターコロナ・ポストコロナ」といった言葉も当たり前のように使われていました・・)
現在のAI推進の動きを見ていると、あの頃とよく似た空気を感じます。
リモートワークで、組織や働き方は変わったのか?
コロナ禍でリモートワークが一気に広がったとき、多くの人が「働き方は大きく変わる」と感じていました。実際、出社しなくても仕事が回ることが分かり、オンラインでの会議やコミュニケーションも一気に当たり前になった。それまで前提だったものが、短期間で崩れたような感覚さえありました。
しかし、あれから数年が過ぎた今、振り返ってみるとどうでしょうか。
確かに働く場所の選択肢は増え、リモートという手段自体は定着しました。でも、組織の動き方や意思決定の仕方、評価の基準といった“中身”は、そこまで大きくは変わっていません。
重要な会議は対面に戻り、意思決定は従来通りのプロセスをなぞり、評価も出社していた頃の延長線上にある。リモートという手段は取り入れられたものの、組織の前提そのものはほとんど変わらなかった。むしろ、変えようとした大事な部分ほど、どこかで元に戻っていったようにも見えます。
組織を引き戻す「輪ゴムの力」
輪ゴムを引っ張ると、元に戻ろうとします。強く引っ張れば引っ張るほど、その力も強くなる。
リモートワークで起きていたこともこれと似ています。働く場所や手段は大きく変わった。でも、その変化は時間とともに、少しずつ元に戻っていった。
なぜか。⸻そこには、変わろうとする力とは別に、元に戻ろうとする力が働いていたからです。
新しいツールや働き方によって変化が起きても、それを受け止める側の前提が変わらなければ、どこかで元の形に引き戻されていく。この引き戻す力こそが「輪ゴムの力」です。
そして今、AI推進においても同じことが起こっているように見えます。
新しいツールや働き方によって変化が起きても、それを受け止める側の前提が変わらなければ、どこかで元の形に引き戻されていく。この引き戻す力こそが「輪ゴムの力」です。
そして今、AI推進においても同じことが起こっているように見えます。

AI推進はツールの話ではない。組織デザインの話なのだ。
AI推進でも、同じことが起きています。
仕組みとしてのAIツールの導入やルールづくりは進んでいます。そして個人の生産性は上がり、実際に一部の人は圧倒的に速く、質の高いアウトプットを出せるようになっています。
でも、その変化がそのまま組織の力になるとは限らない。
なぜなら組織の前提が、その変化に対応していないからです。
でも、その変化がそのまま組織の力になるとは限らない。
なぜなら組織の前提が、その変化に対応していないからです。
たとえば、分業の前提です。
これまでチームで分担していた仕事の多くが、AIによって一人で完結できるようになっている。それにもかかわらず役割の切り方はそのままなので、「どこまでを誰が担うのか」が曖昧になる。結果として、仕事は進んでいるのに、チームとしてのつながりや流れは弱くなっていく。
ナレッジの前提も同じです。
従来は、うまくいったやり方を蓄積し、共有することで組織としての力を高めてきました。でもAIを使うと、その場で答えを作れてしまう。個人の中で完結する仕事が増え、ナレッジは蓄積されにくくなる。組織として何が再現できるのかが、見えにくくなっていきます。
意思決定の前提も変わります。
AIによって誰もが一定水準のアウトプットを出せるようになる一方で、それぞれが異なる前提や情報をもとにしているため、議論の土台が揃わない。どの案もそれらしく見える中で、比較や統合に時間がかかり、意思決定はむしろ難しくなる。
そしてまた評価の前提も揺らぎます。
AIを使えば、一定レベルの成果は出せる。その中で何をもって差とするのかが分かりにくくなる。アウトプットだけでは評価しきれず、「何を考え、どう使い、どう判断したか」といったプロセスに目を向ける必要が出てくるが、評価の仕組みはそこに追いついていない。
意思決定の前提も変わります。
AIによって誰もが一定水準のアウトプットを出せるようになる一方で、それぞれが異なる前提や情報をもとにしているため、議論の土台が揃わない。どの案もそれらしく見える中で、比較や統合に時間がかかり、意思決定はむしろ難しくなる。
そしてまた評価の前提も揺らぎます。
AIを使えば、一定レベルの成果は出せる。その中で何をもって差とするのかが分かりにくくなる。アウトプットだけでは評価しきれず、「何を考え、どう使い、どう判断したか」といったプロセスに目を向ける必要が出てくるが、評価の仕組みはそこに追いついていない。
AIを導入するということは、単なるツールの話ではなく組織デザインの問題なのです。
AI活用のための組織デザイン
やるべきことは、ツールの活用を広げることではなく、組織の前提を設計し直すことです。
AIを使って何を目指すのかというビジョン。
個人の力をどうチームとして束ねるのかというチーム設計。
どんな行動や判断が求められるのかという組織文化。
前提を揃えるためのコミュニケーションのあり方。
そして、行動を後押しする評価の基準。
こうした組織の土台を変えない限り、どれだけAIを活用しても、変化はどこかで引き戻されてしまう。
AIを使って何を目指すのかというビジョン。
個人の力をどうチームとして束ねるのかというチーム設計。
どんな行動や判断が求められるのかという組織文化。
前提を揃えるためのコミュニケーションのあり方。
そして、行動を後押しする評価の基準。
こうした組織の土台を変えない限り、どれだけAIを活用しても、変化はどこかで引き戻されてしまう。
AIは仕事のやり方を変えます。でも、組織のあり方までは勝手には変えてくれません。
だからこそ問われているのは、AIをどう使うかではなく、組織をどう設計し直すかです。
また輪ゴムを引き戻されるのか。それともかつて前提を見直し、脱学習するのか。
AI推進の現在地は、その分岐点にあります。
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Akihiro Yonemoto
株式会社mct エクスペリエンスデザイナー/ストラテジスト
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